2010/03/31

Cooperative N-Heterocyclic Carbene/Lewis Acid Catalysis for Highly Stereoselective Annulation Reactions with Homoenolates

Benoit Cardinal-David, Dustin E. A. Raup and Karl A. Scheidt*
DOI: 10.1021/ja910666n

カルボニル基の根元は本来求電子的であるが、そこを求核的な反応を行うように変換させることを極性転換という。たとえばアルデヒドに対応するジチアンは、カルボニル炭素に由来する炭素原子が求核的になる。
NHC触媒を用いたStetter反応を始めとする極性転換の化学はRovisやBodeらの研究が最近では有名だろう。本論文はこれらの流れを引き継ぎつつ、NHC触媒とルイス酸を組み合わせたらどうなるかという考え方をポイントに組み立てられている。

ターゲット反応はシンナムアルデヒドとチャルコンを用いたシクロペンテンの合成に定めている。種々検討の結果、ルイス酸として金属アルコキシド、特にTi(OiPr)4が最適で、触媒回転を促進させるためにプロトン源としてイソプロパノールを添加している。
最適条件下、種々α,βー不飽和アルデヒド、チャルコン誘導体について反応を行っているが、βー芳香族置換アルデヒドにおいては良好な収率、極めて高いeeで目的物を得ている。チャルコン誘導体は電子吸引基を有する基質が多く、電子供与基を有する基質では収率が中程度に落ち込むようだが、いずれの場合においても不斉収率は極めて高い。



さて本論文のもう一つのポイントは不斉源のスイッチだ。つまり上述の触媒系ではキラルNHCとアキラルルイス酸の組み合わせにより不斉誘起を起こしていた。しかし、想定遷移状態を考えるに、アキラルNHCとキラルルイス酸でも不斉誘起が可能なはず、と著者らは考え実際に中程度ながら不斉誘起に成功している。



NHCの極性転換は既に多くの報告があるけれども、このように組み合わせの妙によって新たな展開が感じられるとおもしろい。NHCはリガンドとしても頻用されているわけで、あえて金属と併用したところがポイントだろう。

2010/03/30

Direct, One-pot Sequential Reductive Alkylation of Lactams/Amides

Kai-Jiong Xiao, Jie-Min Luo, Ke-Yin Ye, Yu Wang, Pei-Qiang Huang, Prof. *
10.1002/anie.201000652

アミドは対応するエステルなどと比べると反応性が低いために、カルボニル上での置換反応を起こしたいなら一旦イミドに変換して活性化したり、アミンへ還元するならLiAlH4でTHF還流条件など、通常他の官能基へ変換する足がかりとするには不便な官能基だ。
本論文はTf2Oを用いて活性化させることで、カルボニル酸素を求核種で置換しようという論文である。アミドのルイス塩基性の強さを利用したアプローチであり、チオアミドをアルキルハライドで活性化する様式のアナロジーだと考えるとわかりやすい。

メカニズムはカルボニル酸素がOTfとなって活性化されるとともにアミド窒素がイミニウムカチオンとなる。ここにグリニャール試薬が求核種として付加し、N,O-アセタールとなった化合物は余剰のグリニャール試薬のルイス酸性により再びイミニウムとなりもう一つの求核種が付加するというものだ。
本論文の売りは、この二つ目の求核種はグリニャール試薬以外にもリチウム試薬やエノラートイオンを適応可能であるという点だろう。これによって小さな分子中に複数の官能基が適度に配置された魅力的な分子群が合成可能になる。



コンセプト自体は斬新ではないものの、こういった反応をきっちりと抑えていくのも大事だなと思うこのごろ。改善点としてはN,O-アセタール後の脱離に二当量の金属試薬を必要としている点と、グリニャール付加は室温で行うにも関わらずTf2Oによる活性化は-78℃という低温が必要な点で反応操作が煩雑になる点と試薬自体の扱いやすさが低い点だろうか。
積極的に別のルイス酸を添加することで、TfO-よりもマイルドに活性化できる可能性はあるような気がする。

2010/03/29

A Highly Tunable Stereoselective Olefination of Semistabilized Triphenylphosphonium Ylides

De-Jun Dong, Hai-Hua Li and Shi-Kai Tian
DOI: 10.1021/ja910238f

Wittig反応はカルボニル化合物からオレフィンを合成する基本的な反応の一つである。アルキル基などを有する不安定イリドでは速度論的にZ-アルケンが、エステル基などを有する安定イリドではE-アルケンを生成することが知られているが、アリールやビニル基を有する準安定イリドでは生成物の幾何異性が混じることが知られいる。
この課題に対して、イリドリン原子上の置換基をフェニル基から他の置換基へ変更するアプローチが様々取られてきたが、現在のところ満足のゆく成果には至っていない。本論文では発想を転換し、求電子側であるカルボニル化合物を対応するイミンへと変更し、イミン上の置換基を調節することで選択性向上を達成している。

通常のWittig反応との類似性から、4員環のアザフォスフェタンの構造と生成するアルケンの幾何異性には相関があると考えられ、イミンの反応性を向上させるために電子吸引基を導入する方向で著者らは検討を開始した。実際には種々スルホニル基を検討し、多くの場合においてTs基がZ選択的に生成物を得られることを見いだした。興味深いことにn-ヘキサデカンスルホニル基を用いた場合にはE選択的に生成物が得られており、立体的/電子的に微妙なチューニングが選択性に効いてきていることがわかる。そのため、必要な置換基の傾向は同様であるものの、基質によってはZ/E-選択的反応に最適な置換基が変わってしまうようだ。



昔、魚住先生のインタビューで「学部レベルの教科書からテーマを探す」という言葉を読んだ記憶があるが、まさに本論文のコンセプト通りだろう。個人的にはこういった一工夫で既存の反応性を塗り替えるような反応が好きなんだなと改めて思った。

参考)
Wittig反応@ケムステーション
[PDF] 魚住泰広教授に聞く