2010/06/14

Catalytic Asymmetric Transacetalization

Ilija ori, Sreekumar Vellalath and Benjamin List*
DOI: 10.1021/ja102753d

スクリプスのリストらによる触媒的分子内不斉アセタール化反応に関する報告。O,O-アセタールからブレンステッド酸により、オキソニウムイオンを形成、分子内アルコールが付加することで新しくO,O-アセタールが形成されることになる。既存のキラルリン酸を用いた例では、N,N-、およびN,O-アセタールからイミニウムカチオン経由で反応させたものはあるが、O,O-アセタールからオキソニウムカチオン経由で新しく結合形成をはかった例は少ないとのこと。

アセタール形成工程も除去工程も平衡反応であるため、通常は生成する水なりアルコールなりを系外に除くことで平衡を偏らせる工夫をする。本反応のようなアセタール交換では、生成物が逆反応を起こして不斉収率が低下しないような工夫が必要だろうと、容易に想像可能だ。著者らは、1)分子内反応とすることで温和な条件でも反応が進行する、2)結果として逆反応も抑えられる、という推測の基に検討を開始したようだ。また不斉誘起という観点からは、リン酸アニオンとオキソニウムカチオンとのイオン性化合物を経由して分子内アルコールの付加を制御することになる。



実際の検討ではMS4Aを添加することが重要となっているので、エタノールの系外への除去はMSが担っていることがわかる。不斉収率は高くないものの、1mol%の触媒料、室温で反応がほぼ完結するようなので、そこそこ立派な結果だと言えるだろう。基質としては、環化のはやい5員環型の基質でよい結果を得ており、6員環型の基質や、Thorpe–Ingold効果が得られず環化の遅くなるgem-置換基のない基質では不斉収率がかなり下がっている。

折角不斉点を導入しても、生成物の有用性がイマイチ見えてこない気がする反応なのは気のせいだろうか。個人的には、上述の不斉収率の低い基質での、時間経過による不斉収率の変化などを調べ、逆反応の有無について知見を得たい気がする。

2010/06/10

Gold-Catalyzed One-Step Practical Synthesis of Oxetan-3-ones

Longwu Ye, Weimin He and Liming Zhang*
DOI: 10.1021/ja1033952

4員環の環状エーテル、オキセタンはCarreiraらの研究もあって創薬の分野ではその物性と特許性の面から注目を集めている化合物群だ。本論文では酸化的条件下、アルキンと金触媒との反応で生じた金カルベノイドの近接アルコールへの挿入によりオキセタンー3ーオンの合成を行っている。

αージアゾケトンを用いた近接アルコールへの挿入は既知の反応であったが、ジアゾ化合物は調製の煩雑さと爆発性を有しており、日常的な合成には望ましい原料とは言えない。一方で筆者らが見いだしていた酸化的条件により金触媒とアルキンから金カルベノイド種を生成させる知見を、ジアゾ化合物の化学と比較することでオキセタン形成が可能ではないかと考えるに至ったのが研究の発端だ。これが可能ならば容易に入手可能なプロパルギルアルコールがαージアゾケトン等価体となり、有用性が高いと考えた。



種々検討を重ねた結果、ブレンステッド酸、置換ピリジンNーオキシド、金触媒を用いることで良好な収率で望みのオキセタンー3ーオンが得られることを見いだした。これは条件を少し変更することで2級プロパルギルアルコールだけでなく、3級の基質にも適応可能であり汎用性の高さが伺える。無置換のオキセタンー3ーオンは高価であり、かつ揮発性であるため、これを安価なプロパルギルアルコールから合成し、そのまま変換を行うことで合成的にもコスト的にも有用性の一端を示している。水分、酸素をケアしなくていい点も本反応の簡便さを後押ししている。

もう少し反応機構に関する記述が欲しいところだが、速報としてはこの程度かもしれない。

2010/06/05

Nucleophilic Perfluoroalkylation of Imines and Carbonyls

G. K. Surya Prakash*, Ying Wang, Ryo Mogi, Jinbo Hu†, Thomas Mathew and George A. Olah
DOI: 10.1021/ol100918d

フッ素化合物の有用性はよく語られるところであるが、トリフルオロメチル基以外の長鎖パーフルオロアルキル基を導入する方法論は実は少ない。著者らはペンタフルオロエチルフェニルスルホンとカリウムtert-ブトキシドを反応させることで、系中にて求核的ペンタフルオロエチルアニオンを生成、イミンやアルデヒド、ケトンなどへ付加させることに成功した。

以前の研究によりトリフルオロメチルフェニルスルホンとカリウムtert-ブトキシドから生成させたトリフルオロメチルアニオンがアルデヒドへと付加する反応を見いだしていたため、本報告はそのペンタフルオロエチル基への適応と基質の拡張にあたる。



反応条件を見てみると、THF中でイミンとスルホンを-78度の低温下で撹拌しつつKOtBuをゆっくりと滴下するとのことで、温度制御がシビアな反応のようだ。基質としてはエノール化しうるイミンにも一応適応可能だが、脂肪族アルデヒドでは収率が低下するようだ。またα、βー不飽和の基質に対しても1,2-付加が進行すること、キラルスルフィニルイミンに対する付加では高いジアステレオ選択性で付加が進行することも特筆すべき点だ。

基質となるスルホンもカルボン酸カリウム塩から容易に調製可能とのことで、使い勝手のよい反応に思える。