Ilija ori, Sreekumar Vellalath and Benjamin List*
DOI: 10.1021/ja102753d
スクリプスのリストらによる触媒的分子内不斉アセタール化反応に関する報告。O,O-アセタールからブレンステッド酸により、オキソニウムイオンを形成、分子内アルコールが付加することで新しくO,O-アセタールが形成されることになる。既存のキラルリン酸を用いた例では、N,N-、およびN,O-アセタールからイミニウムカチオン経由で反応させたものはあるが、O,O-アセタールからオキソニウムカチオン経由で新しく結合形成をはかった例は少ないとのこと。
アセタール形成工程も除去工程も平衡反応であるため、通常は生成する水なりアルコールなりを系外に除くことで平衡を偏らせる工夫をする。本反応のようなアセタール交換では、生成物が逆反応を起こして不斉収率が低下しないような工夫が必要だろうと、容易に想像可能だ。著者らは、1)分子内反応とすることで温和な条件でも反応が進行する、2)結果として逆反応も抑えられる、という推測の基に検討を開始したようだ。また不斉誘起という観点からは、リン酸アニオンとオキソニウムカチオンとのイオン性化合物を経由して分子内アルコールの付加を制御することになる。
実際の検討ではMS4Aを添加することが重要となっているので、エタノールの系外への除去はMSが担っていることがわかる。不斉収率は高くないものの、1mol%の触媒料、室温で反応がほぼ完結するようなので、そこそこ立派な結果だと言えるだろう。基質としては、環化のはやい5員環型の基質でよい結果を得ており、6員環型の基質や、Thorpe–Ingold効果が得られず環化の遅くなるgem-置換基のない基質では不斉収率がかなり下がっている。
折角不斉点を導入しても、生成物の有用性がイマイチ見えてこない気がする反応なのは気のせいだろうか。個人的には、上述の不斉収率の低い基質での、時間経過による不斉収率の変化などを調べ、逆反応の有無について知見を得たい気がする。
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