Katsuhiko Tomooka*, Kazuhiro Uehara, Rie Nishikawa, Masaki Suzuki and Kazunobu Igawa
10.1021/ja1024657
含窒素9員環でジアリルアミン構造のものは室温での反転が遅く、面不斉を持つ(らしい)。従って、前駆体の閉環反応においてキラル源を用いた分子内閉環反応を行うことで不斉誘起を起こすことが可能だ。本論文はこのような珍しいタイプの反応でキラル9員環合成に成功したものである。これまではキラル9員環はラセミ体の分割により得ており、そこから各種キラルビルディングブロックへと誘導していることから、見慣れない生成物であるがその有用性は間違いないだろう。
前駆体としてはTs-アミドを求核部位、臭素原子を求電子部位として分子内環化反応を検討した。最初の検討ではシンコナアルカロイド誘導体を用いて、求電子部位の活性化を行ったところ、最大37%eeの不斉誘起にとどまった。そこで糖由来のリチウムアルコキシドを用いて求核部位の活性化を試みたところ、2当量以上のキラル源を用いた際に収率、不斉収率ともに最もよい値を得た。
本反応の適応基質は二つだけで、しかも一つは不斉収率もさほど高くない。さらに糖由来で再利用可能とは言えキラル源を当量以上用いているなど、率直に言えば不満点も多い論文だろう。しかし生成物は各種官能基化された物質へと変換可能で合成化学的には有用で、さらに類似の報告例がないことから本研究の価値は高いのではなかろうか。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿