uthanat Kaeobamrung, Jessada Mahatthananchai, Pinguan Zheng and Jeffrey W. Bode*
DOI: 10.1021/ja103631u
Claisen転位は立体的に混んだ部分にも置換基を導入しうる優れた反応であり、ジョンソン型を始め様々な変法も知られている。本報告はCoatesの変法を参考にした、NHC触媒を用いたClaisen転位に関するもので、これまでStteter反応を始めとした極性転換に加えてアシルアゾリウム塩の化学にまた一つの可能性を示すものだ。
この論文の着眼点は二つある。一つ目はアルキニルアルデヒドとNHC触媒によりアルコール存在化にα、βー不飽和エステルに変換される報告が存在していることだ。これによりαークロロアルデヒドを基質とすることの多かったNHC触媒の化学の原料をアルキニルアルデヒドにすることができた。二つ目は中間体のアシルアゾリウム塩は活性エステル同様に、アルコールやエノールの酸素から求核攻撃を受けて、ヘミアセタール様の中間体を経るという推察だ。この二つを組み合わせることで、ヘミアセタール構造はClaizen転位基質となるOーアリルエノールとなる。
主にkojic酸を基質して展開しているものの、上図に示すような容易にエノールになる基質やナフトールのようなフェノール誘導体でもClaizen体を得ている点が興味深い。本反応は必ずしもClaizen転位を経由しなくても目的物に達するため各種メカニズム解析を行っている。すなわち、エノールがα、βー不飽和アルデヒドへとマイケル付加したわけではない(だろう)ということを示そうとしている。速度論解析、ラベル化実験、対照実験などの結果が、1,2-付加の後のClaizen転位という反応機構を支持している。
具体的に読むとわかるが、対照実験の中身は基質の特殊性で片付けられる面もあり、必ずしも望みの結果を支持しているとはいえないだろう。そのため、結論で著者らも述べているようにどちらの反応機構が正しいのかを完全に結論できているわけではない。それでもNHC触媒の新たな一面を開拓したことは事実であり、今後Rovisなど競合グループからの報告も相次ぐのではないだろうか。
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