2010/06/15

Copper Catalyzed Arylation/C−C Bond Activation

Chuan He, Sheng Guo, Li Huang and Aiwen Lei*
DOI: 10.1021/ja1033777

本報告は銅(I)触媒を用いた、ハロゲン化アリールと1,3-ジケトンのカップリングによりαーアリールケトンを合成する反応だ。カップリングする際にアシル基が一つ飛ぶことでαーアリールケトンが生成している点が珍しい。パラジウムを用いた求電子的アリールパラジウム種との反応と比べ、銅触媒を用いた例はぐっと少なくなるため、本論文は安価で扱いやすい銅触媒を用いた反応例に選択肢を持たせたことに価値があると言える。また本例ではアシル化の際に炭素ー炭素結合開裂を伴うため、その反応機構について各種検討を行っている点が個人的には好評価であった。

条件検討の結果、ヨウ化銅(I)が最も高い収率で目的物を与えたものの、塩化銅(II)などでも十分に高い収率を得ていることが興味深い。基質としてはヨウ化アリールを用いた方が収率が高いものの、臭化アリールにも適応可能となっている。ケトン側は基本的に対称な1,3-ジケトンを用いているが、非対称ケトンの場合はアセチル基が脱離するように反応が進行するようだ。



炭素ー炭素結合開裂に関しては、無水条件で反応を行った際には開裂が観測されなかったこと、およびこのジケトン体を反応条件に付しても開裂が起きなかったことより、アリール銅種とのカップリング後に水の関与により結合開裂が起きていることが示唆された。この際、水の付加により酢酸カリウムが生じることになるが、筆者らはReactIRによってKOAcに相当する1583cm^-1のピークが徐々に生成してくることを観測している。さらにヨウ化アリール非存在化での結合開裂が起きないことも確認している。

以上のように、アトムエコノミーや反応収率の点からは魅力的とは言いがたい反応のように思えるが、きちんと対照実験を行うことで反応機構に関する洞察を深めていっているのが個人的にはよいと思える論文だった。

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