Ine I. F. Boogaerts and Steven P. Nolan*
DOI: 10.1021/ja103429q
オキサゾールの活性プロトンはブチルリチウムなどの強塩基で引き抜くことが可能で、求電子剤との反応などに用いられる。本報告はAu-NHC錯体を塩基触媒として用い、CO2雰囲気下で挿入を行わせ、カルボン酸を得る反応に関するものだ。上述の両論量の強塩基を用いる方法論では生じる塩廃棄物量という点で、遷移金属触媒とボロン酸などを用いる既存方法と比べた場合には基質を事前調整する必要がない点で有利な点ということになる。
Au-NHC錯体は電子不足芳香族のC-H結合を活性化することは既に報告されていたので、pKaから考えてオキサゾールのC-H結合も活性化可能だと筆者らは考えた。実際に検討をしてみると、オキサゾールのみならずN-メチルイミダゾールやトリアゾールなどの複素環でもカルボキシル化が進行した。個人的には意外だったが、チアゾールに関しても反応が進行するものの2位選択的ではなかったため、pKaに差が少ないということなのだろう。
反応機構については、オキサゾールに挿入したHet-Au-NHC型の中間体と、そこにCO2の挿入したHet-CO2-Au-NHC型の中間体を単離している(上図中間体)。これにより提唱されている機構をきちんと支持することに成功している。
今回の反応は触媒料1.5 mol%で収率もよく、NHC触媒も頻用されるタイプのものであり、CO2分圧も1.5barとさほど高くないため、使い勝手はよさそうだ。現在のところ実務では、ブチルリチウムを用いて生成させたアニオンに、ドライアイスより発生させたガスを吹き込むことでカルボン酸とすることが多いけれど、ガスの脱水に硫酸を通すなど装置の組立てが少し面倒である。今後、本報告のような手法がどんどん増えていけば、既存の方法論に取って代わることになるかもしれない。
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いつも楽しく拝見させていただいております.
返信削除一点要望を述べさせていただきますと,ラベルだけでなく,DOIの部分にジャーナル名を書いておいていただけると,よりわかりやすくて良いかと思います.
わがままを言って申し訳無いですが,検討していただけると幸いです.
コメントありがとうございます。
返信削除DOIの件、ナンバリングを見ればわかるような気がしていましたが(JACS:jaxxxx, Angew:anie.xxxxなど)、需要があるようでしたら、次回更新分から気をつけていきたいと思います。