Barry M. Trost* and Xinjun Luan
J. Am. Chem. Soc., 10.1021/ja110501v
二つの触媒が協奏的に働いて進行する反応は、近年多くの例を挙げることができる。しかしその多くの例において、片方の触媒はルイス酸として求電子剤に配位するなどの作用にとどまり、共有結合切断など基質の化学変換を伴わない。本報告は、二つの金属触媒がそれぞれ別の基質と反応することで活性種を生じ、その活性種同士が反応するという例になる。
著者らは、独自に開発したバナジウム触媒を用いたプロパルギルアルコールからの求核的アレンエノラートの生成反応と、パラジウム触媒を用いた求電子的π-アリル種の生成反応を組み合わせることで新しい形式の反応が可能になると期待した。実際、両金属触媒を用いたところ、期待通りにアレンエノラートのα位がアリル化された生成物が良好な収率で得られた。バナジウム触媒のみではアレンエノラートのアルコールによるプロトン化が、パラジウム触媒のみではπ-アリル種へのアルコールによる求核反応が起きるのみであったことから、二つの触媒の存在が新しい反応性に必要であることがわかる。この反応では望みの反応経路を進行させるために、系中での活性種濃度が重要であると考えられ、実際両触媒の比により生成物の分布が変わってきている。
最適条件下、種々プロパルギルアルコール、アリルカーボネートを用いて反応を行った。プロパルギル位は一例を除いて芳香族置換基のみであること、得られるエノンの幾何異性は中程度から良好なE選択性を示していることがまず目につく。アリルカーボネートの立体的要因が反応性に大きく影響を与えることも想像通りだ。反応条件の穏和さから、TBS基やBoc基などを有する基質にも問題なく適応可能となっている。
本反応で得られる生成物はカルボニル化合物のα-アリル化に相当する。活性アルキンを用いた還元的アルキル化などにより骨格構築の可能性があるとはいえ、通常用いられるエノラートの化学、π-アリルの化学ともこのような骨格を得るのは難しく、そこに本反応の価値があるだろう。
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