2011/01/06

Tropylium Ion Mediated α-Cyanation of Amines

Julia M. Allen and Tristan H. Lambert*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja109617y

アミンの酸化によるイミン形成は、遷移金属、DDQ、超原子価ヨウ素、一重項酸素など様々な酸化条件によって達成可能だ。しかし、これらの基質適応範囲はあまり広くなく、ジアルキルアニリンやテトラヒドロイソキノリンのような基質が用いられることが多い。本報告ではトロピリウムイオンを酸化剤とする反応に関するもので、DDQとは異なる位置選択性を示している。

トロピリウムイオンを酸化剤とする報告は極めて限定的ではあるが既に報告があった。著者らはその合成化学的な興味から、トロピリウムイオンのさらなる反応性に関して検討を開始した。アセトニトリル中、トリイソブチルアミンとトロピリウムテトラフルオロボレートを混合すると速やかにイミニウムイオンへと変換された。またKCN存在下ではα位がシアノ化された生成物が高収率で得られることがわかった。トロピリウムイオンとKCNの組み合わせはシクロヘプタトリエニルニトリルを与える、という報告が既にあったことを考えると、この結果は興味深い。著者らはKCNがアセトニトリルには溶解しないことを望みの反応が進行した理由としてあげており、実際にクラウンエーテルの添加やTMSCNの利用などシアニドが溶解している状態ではトロピリウムイオンがシアノ化されることを確認している。


様々な基質にて反応を試みたところ、電子豊富な部位の方が反応しやすいことが明らかとなった。例えばベンジルジイソブチルアミンでは5.9:1の選択性でアルキル部位が反応をするが、4-ニトロベンジルの基質では>20:1以上の選択性、逆に4-メトキシベンジルの基質では3.7:1にまで選択性が低下する。C-H結合の強さを考えるとこの結果はおもしろい。電子的要因だけでなく、立体的な要因も位置選択性に大きく影響を与え、ネオペンチル部位のような嵩高い部位では反応しない。基質により好ましい反応温度に差があり、これはアミンとトロピリウムイオンとの反応が可逆反応として存在し、立体的に小さなアミンではこの平衡を解離側に移動させるために高温条件が必要だということだ。

本反応で溶解しないはずのKCNがイミニウムイオンとは反応していることになるが、これはソルトメタセシスによりKBF4が生成することによると著者らは主張している。またベンジル位の反応性が低いことは既知の酸化剤であるDDQとは逆の反応性であることを確かめており、興味深い。反応機構としてはトロピリウムイオンによる直接のヒドリド引き抜き機構と、イミニウムラジカルカチオンを経由する段階的な機構が考えられる。確証を得ているわけではないが、著者らは位置選択性などの実験結果から直接的な機構を支持したいように感じられる。

最後に本方法論の応用として、イミニウムカチオン生成後にaza-Cope転位を伴ってイミンを得ている。おそらくgem-ジフェニル基の嵩高さによると思われるが、この例では本条件が2級アミンにも適応できていることもおもしろい。

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