Alfonso García-Rubia, Dr. M. Ángeles Fernández-Ibáñez, Dr. Ramón Gómez Arrayás, Prof. Dr. Juan Carlos Carretero
Chem. Eur. J., DOI: 10.1002/chem.201003633
酸化的Heck反応、Fujiwara-Heck反応はパラジウム触媒によるC-H活性化に続いてオレフィンへの挿入を行う反応で、アトムエコノミーが求められる近年において注目を集めている反応のひとつだ。芳香族C-H結合の活性化において望みの位置で反応を行わせるために、2-ピリジル基やアミド基などの配向基を用いる手法が広く利用されている。しかし、反応生成物の有用性を考えると容易に除去可能な配向基や、様々な官能基へと変換可能な配向基の開発が望ましい。本論文ではこのような配向基として2-ピリジンスルフィニル基の利用を報告している。
著者らはイミン上の保護基として2-ピリジンスルホニル基を導入することで触媒的不斉反応を実現したり、インドールに2-ピリジンスルホニル基を導入することで配向基としてインドールのホモカップリングを報告している。このような化学の発展形として、ピリジンスルホニル基の芳香族上の配向基としての利用を想起するに至った。そこでアクリル酸誘導体との酸化的Heck反応の検討を開始した所、2-ピリジンスルホニル基では反応性が低いものの、酸化段階を落としたスルホキシドおよびスルフィドでは反応性が向上した。スルフィドを用いた場合にはスルホキシドへと酸化されてしまった生成物も得られてきたものの、スルホキシドを配向基とした場合にはスルホンへの酸化は観測されず、Heck成績体が高収率で得られるのみであった。また2-ピリジルをフェニル、メチル、4-ピリジルへと変換すると反応はスルホキシドの酸化が起きるのみであることから、2-ピリジル置換基が配向基として作用していることが示唆された。
本方法論はアクリル酸エステル、ビニルスルホンなどの活性オレフィンのみならず、酸化剤を変える必要があるもののスチレン誘導体にも適応可能だ。芳香環状のメタ位に置換基がある場合は障害のない方のオルト位選択的に反応が進行する。また酸化剤とオレフィンの当量を増やすことで、二置換体を得ることも可能だ。当初の想定通り、2-ピリジンスルフィニル基は酸化条件でスルホンに、還元条件でスルフィドにすることが可能だ。還元条件を選ぶことで、オレフィンの還元を伴いながらスルフィドへと変換することもできる。さらにnBuLiを低温で作用させることで配向基を除去することも可能だ。
全体的にもう少し収率が向上する方が好ましいが、除去可能/変換可能な配向基というコンセプトを示すことには成功している。本条件では酸化的条件でありながら、酸化されやすい硫黄原子を用いてみた点が一つのポイントだろう。
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