2011/02/15

Access to High Levels of Molecular Complexity by One-Pot Iridium/Enamine Asymmetric Catalysis

Adrien Quintard, Prof. Dr. Alexandre Alexakis, Dr. Clément Mazet
Angew. Chem. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201007001

一つの触媒では不可能な変換反応も、複数の触媒が連続的に反応を引き起こすことで可能となる。本報告ではイリジウム触媒によるアリルアルコールのアルデヒドへの異性化と、有機分子触媒による生じたアルデヒドのαー官能基化が段階的におこっている。マッチ/ミスマッチはあるものの、多くの基質でそれぞれの不斉点が触媒制御により構築されている。

著者らはまずCrabtree触媒を用いて3置換アリルアルコールの異性化を進行させた後、Jorsengen型の触媒を用いてビニルスルホンへの1,4-付加を行った。結果は、アルデヒドのα位が完全に制御されることでジアステレオ比が1:1でどちらの異性体も高いeeにて生成物を得た。その後、セリン由来のイリジウム触媒を用いてオレフィン部位の不斉点を制御することで、アルデヒドのα位と並んで高いジアステレオ選択性で反応を制御できた。オレフィンの置換基が極めて嵩高い場合を除くと、アルデヒドα位の不斉は用いる触媒によって高度に制御可能という点がポイントだ。置換基がtert-ブチル基などになるとミスマッチ型の触媒では反応が進行しなくなる。


オレフィンの置換基としては、iPr/Phなどのようにアリール基があると高い選択性が出るようだ。逆の幾何異性での結果も気になる所だが、そのようなデータはない。前述のようにMe/tert-BuやMe/SiMe2Phのような嵩高い置換基を有する基質ではマッチ型のみで反応が進行する。いずれの場合も非常に高い選択性で目的物を得ている。ジアステレオ選択性に関しては用いる求電子剤(ビニルスルホン)の当量を少なめにしていることも関係しており、二段階目の1,4-付加の段階で速度論分割が起こっているために、drが上がっているのだろう。求電子剤としては他にもNFSIやNCS、アゾジカルボン酸エステルなども利用可能で、これらによりフッ素化、クロロ化、アミノ化を非常に高い不斉収率で実現している。

本系で得られるα-置換-β-二置換アルデヒドは冒頭でも述べられているように、MacMillanとJorgensenを中心として2005年位に流行した有機分子触媒によるカスケード型の反応でも得られるタイプの生成物だ。ウリとしては異性化に関する詳細な一般性は不明なものの、カスケード反応における1,4-付加による不斉構築よりもアリルアルコール合成の方が容易という点だろうか。もし本系が段階的ではなく、全て混ぜるだけで進行するようだと非常に魅力的になるのだが、それはなかなか難しそうだ。先日Angew. Chem.のHighlightsにもあったような、NHC触媒とルイス酸を組み合わせる反応のように、今までなかったような触媒の組み合わせを切り開いたという点で本報告の意義があるだろう。

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