Benoit Cardinal-David, Dustin E. A. Raup and Karl A. Scheidt*
DOI: 10.1021/ja910666n
カルボニル基の根元は本来求電子的であるが、そこを求核的な反応を行うように変換させることを極性転換という。たとえばアルデヒドに対応するジチアンは、カルボニル炭素に由来する炭素原子が求核的になる。
NHC触媒を用いたStetter反応を始めとする極性転換の化学はRovisやBodeらの研究が最近では有名だろう。本論文はこれらの流れを引き継ぎつつ、NHC触媒とルイス酸を組み合わせたらどうなるかという考え方をポイントに組み立てられている。
ターゲット反応はシンナムアルデヒドとチャルコンを用いたシクロペンテンの合成に定めている。種々検討の結果、ルイス酸として金属アルコキシド、特にTi(OiPr)4が最適で、触媒回転を促進させるためにプロトン源としてイソプロパノールを添加している。
最適条件下、種々α,βー不飽和アルデヒド、チャルコン誘導体について反応を行っているが、βー芳香族置換アルデヒドにおいては良好な収率、極めて高いeeで目的物を得ている。チャルコン誘導体は電子吸引基を有する基質が多く、電子供与基を有する基質では収率が中程度に落ち込むようだが、いずれの場合においても不斉収率は極めて高い。
さて本論文のもう一つのポイントは不斉源のスイッチだ。つまり上述の触媒系ではキラルNHCとアキラルルイス酸の組み合わせにより不斉誘起を起こしていた。しかし、想定遷移状態を考えるに、アキラルNHCとキラルルイス酸でも不斉誘起が可能なはず、と著者らは考え実際に中程度ながら不斉誘起に成功している。
NHCの極性転換は既に多くの報告があるけれども、このように組み合わせの妙によって新たな展開が感じられるとおもしろい。NHCはリガンドとしても頻用されているわけで、あえて金属と併用したところがポイントだろう。
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