Brian J. Albert, Dr., Hisashi Yamamoto, Prof. Dr.
10.1002/anie.200907076
ポリケタイドはシンプルな構造ながら、様々な生理活性物質を有する化合物群であり、またアルドール反応生成物から得ることが可能であるため、合成化学者のターゲットとしての地位を築いてきた。
しかしながら、ボトムアップアプローチによる合成法では、例えばEvansアルドール後に、キラル補助基をアルデヒドへと変換し、再びアルドール反応を行うなど、多段階の変換工程が必要となる場合が多く、効率的とは呼べないものが多かった。
本報告では山本先生らが最近力を入れているトリストリメチルシリル基を用いたアルデヒドエノラートの向山型アルドール反応において、連続的なアルドール付加を経るトリオール/テトラオールのジアステレオ選択的合成法について述べられている。
以前の報告より2回目のアルドール反応は進行することが知られていたが、今回添加剤の検討によりヨードベンゼンを添加することで3回目の付加が進行することを見いだした。
またα位、またはβ位にキラル炭素を有するアルデヒドを用いた場合には高いジアステレオ選択性にて成績体を得ることが可能である。さらにアルドール反応後に、ワンポットにてグリニャール試薬を添加することでジアステレオ選択的にテトラオールを得ている。
あまり類似例を見ないヨウ化物化合物の特異的な反応促進効果について、筆者らはヨウ素原子のシリコン原子へのルイス塩基性によるものだとMS測定により推測している。ヨードベンゼンを用いた場合には10 mol%必要であるが、ヨードアセチレン誘導体を用いた場合には0.1 mol%にまで低減可能性を示すなど、さらなる反応機構解析と条件検討が期待される部分だ。
本反応はシリルエノールエーテルを利用しており、一見すると環境調和性を求められる現代化学に逆行しているようにも見えるが、短工程かつ低触媒量にて多段階反応が進行することから有用な反応のように思える。(因みに収率が低いと感じる人もいるかもしれないけれど、生成する結合数を考えるとこの収率は相当高い。)
今後の展開としては、プロピオンアルデヒド由来のエノールエーテルを使った場合の反応が挙げられるが、個人的にはケイ素ーヨウ素の相互作用というコンセプトで新しい反応性が活かせる方法論の創出に期待したい。
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