Bo Qian, Shengmei Guo, Jianping Shao, Qiming Zhu, Lei Yang, Chungu Xia and Hanmin Huang*
DOI: 10.1021/ja910104n
遷移金属を用いたAr-H結合の活性化、いわゆるC-H活性化反応は近年活発に研究がなされている分野である.
クロスカップリング反応に代表されるAr-X結合に対する酸化的付加を伴う反応は、必然的に量論量の塩が生じてしまい環境調和型化学が叫ばれる昨今好ましいとはいえない.一方でC-H活性化を経由した反応ではその副生成物が生じないことが魅力的である.しかし、最初からハロゲン分子が導入されている従来の酸化的付加反応とは異なり、複数あるC-H結合の中から望みの結合を活性化するという別の問題が生じてくることも事実である.報告されている多くの例ではこの問題を、カルボニル基やピリジンの窒素原子などをdirecting groupとして用いることで位置選択的に反応を進行させている.
本報告ではピリジン窒素をdirecting groupに用いつつ、ベンジル位のC-H結合を活性化することでベンジルパラジウム種を生成させ、さらに生じた金属種とアルドイミンへと付加させることに成功している.反応の概略は以下の通りである.
以下、反応の詳細を述べる.
触媒に関しては検討の結果、酢酸パラジウムが最適であり、この結果は多くの類似反応と同様に酢酸イオンによる分子内水素引き抜きメカニズムを考えると納得しやすい.
ヘテロ芳香族については2.6-ルチジンを用いて条件検討を行っているものの、Ar-H結合との競合反応が起きるというよりは、ベンジル位の引抜が遅いことを反応点を増やすことで対応しているという印象を受ける.実際2-ベンジル-6-メチルピリジンを基質とした場合は2重にベンジルである炭素からの反応の方が多いという結果を得ている.そのほかキノリンタイプの基質も適応可能である.
イミンの一般性については、オルト、メタ、パラ位置換のハロゲンが適応可能であり、クロスカップリングによるさらなる変換の可能性を示すものの、電子供与基に関してはメチル基程度の電子供与能であっても著しく反応が減退してしまうようだ.もっともこの場合はスルホニル基をより電子吸引性のNs基に変更することである程度は改善可能である.また脂肪族イミンについては反応が進行しないとのこと.
速度論実験からベンジル位水素において同位体効果が見られたことから、C-H結合の開裂が律速であるようである.
本論分は、例が少ないベンジル位のC-H活性化に加えて、ロジウム等を除くと例の少ないイミンへの付加を試みたという点で評価される.今後は配位子の最適化による反応性の向上や不斉化などの展開が考えられるだろう.
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