2010/03/29

A Highly Tunable Stereoselective Olefination of Semistabilized Triphenylphosphonium Ylides

De-Jun Dong, Hai-Hua Li and Shi-Kai Tian
DOI: 10.1021/ja910238f

Wittig反応はカルボニル化合物からオレフィンを合成する基本的な反応の一つである。アルキル基などを有する不安定イリドでは速度論的にZ-アルケンが、エステル基などを有する安定イリドではE-アルケンを生成することが知られているが、アリールやビニル基を有する準安定イリドでは生成物の幾何異性が混じることが知られいる。
この課題に対して、イリドリン原子上の置換基をフェニル基から他の置換基へ変更するアプローチが様々取られてきたが、現在のところ満足のゆく成果には至っていない。本論文では発想を転換し、求電子側であるカルボニル化合物を対応するイミンへと変更し、イミン上の置換基を調節することで選択性向上を達成している。

通常のWittig反応との類似性から、4員環のアザフォスフェタンの構造と生成するアルケンの幾何異性には相関があると考えられ、イミンの反応性を向上させるために電子吸引基を導入する方向で著者らは検討を開始した。実際には種々スルホニル基を検討し、多くの場合においてTs基がZ選択的に生成物を得られることを見いだした。興味深いことにn-ヘキサデカンスルホニル基を用いた場合にはE選択的に生成物が得られており、立体的/電子的に微妙なチューニングが選択性に効いてきていることがわかる。そのため、必要な置換基の傾向は同様であるものの、基質によってはZ/E-選択的反応に最適な置換基が変わってしまうようだ。



昔、魚住先生のインタビューで「学部レベルの教科書からテーマを探す」という言葉を読んだ記憶があるが、まさに本論文のコンセプト通りだろう。個人的にはこういった一工夫で既存の反応性を塗り替えるような反応が好きなんだなと改めて思った。

参考)
Wittig反応@ケムステーション
[PDF] 魚住泰広教授に聞く

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