Natalie C. Giampietro, John P. Wolfe, Prof.
10.1002/anie.201000609
α位に二つの置換基を有するカルボニル化合物のエノラートは、E/Z幾何異性体の作り分けが難しく、そのため生成物のジアステレオ選択性に難があることが多い。さらにエステルα位のpKaの高さから、エステルエノラートを用いた直接的アルドール/マンニッヒ反応の例はまだまだ少ない。
本報告は[1,2]-Wittig転位を利用して、αーヒドロキシ-αーアルキルエステルエノラートを選択的に作りマンニッヒ型反応を行うことで、立体選択的に4置換炭素を有するβアミノ酸誘導体の合成に成功している。
本反応の肝は幾何異性を制御したエノラートの生成であるが、これは恐らくヒドロキシル基によるホウ素原子へのキレーション効果によることが多いと推察される。N-アルキル(ベンジル)イミンを用いたマンニッヒ型反応は収率はやや低いものの、高ジアステレオ選択的に進行するようだ。またエノール化しやすい脂肪族アルデヒド由来のイミンについても、スルフィニル基を有するイミン前駆体を用いることでまずまずの収率で目的物を得ている。
興味深いことはイミンを用いた場合にはsyn体が取れたものの、イミン前駆体を用いた場合にはanti体が得られている点だ。著者らは環状型遷移状態と非環状型遷移状態の図を描くことで説明している。しかし、立体選択性の違いは結果としては環状/非環状の違いに起因すると思われるが、後者の場合にプロトン化されたイミニウムカチオンの立体的嵩高さをあげており塩基性条件下におけるこの状態図には疑問が残る。
また細かいけれど、この論文では不斉補助基を用いて不斉を導入しているわけで、タイトルには"Asymmetric"とあるが"Diastereoselective"が適切なのではないかと考えてしまう。いずれにせよ、まだまだ珍しいα、αー二置換のエステルエノラートを積極的に利用した反応で、その生成機構もWittig転位を利用するという興味深い論文だといえる。
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