2010/03/11

Desymmetrization of Cyclohexadienones via Brønsted Acid-Catalyzed Enantioselective Oxo-Michael Reaction

Qing Gu, Zi-Qiang Rong, Chao Zheng and Shu-Li You
DOI: 10.1021/ja100207s

もはやプロリン並の一大勢力となった、秋山ー寺田型触媒を用いた反応の報告例である。
非対称化反応は不斉を導入するにあたって、思いつきやすく、また分子内反応であるならば(分子間反応は反応を上手く設計しないと難)触媒を介することで比較的立体制御を行いやすいためこれまで多くの反応が報告されている。
一般にオキシマイケル反応は、1)反応性が低い、2)レトロ反応が容易、という理由から進行させるのが難しい反応である。本論文は例の少ないオキシマイケル反応を選択することで他の論文との差別化を図っている。

反応の概略は以下のようである。4位に置換基を有するフェノール誘導体を酸化処理することで基質を合成し、触媒存在下反応を行うことで目的物を得ている。



4位置換基の一般性は、アルキル基の場合エチル、イソプロピルと大きくなるにつれて反応収率、不斉収率ともに低下していくが、芳香族置換基の場合は電子吸引基、供与基ともに良好な収率、不斉収率で適応可能である。

正直に申し上げて特筆すべき所のない論文であるが、以下のようなことを考えたので取りあげてみた。
1)酸化段階からワンポットでいったらおもしろい
まだまだ未達の部分が多いのは承知の上で書くと、アルドール、マイケル、マンニッヒに代表されるアニオンの化学や、D-A反応のような電子環状反応の触媒的不斉反応の例はすでにたくさんあるのだから、これからは触媒的不斉反応炭素ー炭素結合形成反応にredoxにを取り入れるようなものを考えていくと、新しいコンセプト・触媒設計に繋がるのではないかと思う。MacMillanのSOMO-catalysisが有機分子触媒としては一つの方向性だけど、SharplessやJacobsenの例を持ち出すまでもなく金属こそ酸化段階の変化に強いのだから有機金属でも工夫次第でいけるんじゃないかなと思う。まあ外野から言ってるだけなんですが。
2)変換反応にこそ誠意を見せるべき
反応の論文は、絶対立体配置の決定であったり、保護機の除去だったりで「一応」変換しましたのような論文が沢山あるが、実務家から見たらこういうところこそ最適化してチャンピオン収率を出すべき。例えばこの論文では二重結合をパラジウムで水素添加するだけで85%収率であるが、こんな低い収率を見るとなんかしらの副生成物が生じるのか?(この場合だとケトンが還元される)といったあらぬ疑問を抱きかねず、反応が魅力的でも敬遠される原因になるんじゃないだろうか。人に使われる反応を開発したいのであれば、アプリケーションを魅力的に見せるべき。

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