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2011/01/09

Tunable stereoselective alkene synthesis with nonstabilized phosphonium ylides

De-Jun Dong, Yuan Li, Jie-Qi Wang and Shi-Kai Tian
Chem. Commun., DOI: 10.1039/C0CC04739B

一般的にWittig反応では速度論支配下ではZ-オレフィンが優先するため、不安定イリドを用いた場合にはZ体が優先的に生成する。一方で不安定イリドからE-オレフィンを得るにはPhLiを用いるSchlosserの変法(β-オキシドイリド法)と言われる方法がある。本報告はアルデヒドをイミンへと変換し、イミン上の置換基を調節することで、不安定イリドを用いてZ/E体をつくりわけるというものだ。

以前このブログでも紹介したように、著者らは既に同様のアプローチにより準安定イリドを用いたZ/Eの作り分けに成功している。そこで同様にスルホニルイミンを用いて、塩基の検討を開始した。ベンズアルデヒド由来のMsイミンに対するWiitig反応では、LDAを用いた場合にはZ:E=92:8とそれなりの選択性で反応が進行し、n-BuLiを塩基とした場合には>99:1のZ選択性で生成物が良好な収率で得られた。続いてスルホニル基上の置換基を検討したところ、2-MeC6H4 (=o-Ts)基置換のスルホニルイミンでは同様にn-BuLiを塩基として<1:99のE選択性で反応が進行した。


各種基質を用いたところ、芳香族イミンだけでなく、脂肪族イミンも含めて、同様の条件で収率よく高い選択性でZ/Eを作り分けることができた。イリドの一般性としてジメチルアミノ基や1級アルコールを有するイリドでも収率、選択性を損なうこと無く反応が進行し、アリルアミンやアリルアルコールを得ることに成功している。

反応機構解析の一貫として、著者らは付加後に生じるベタイン中間体を低温下、HBr処理することでホスホニウム塩として得ている。ここで得られたホスホニウム塩はジアステレオ混合物であり、このジアステレオ比と、ホスホニウム塩を塩基処理することで得られるオレフィンのZ/Eに強い相関があることから、イリドによるジアステレオ選択的な付加が反応の選択性を決定しているとしている。そしてスルホニル基の置換基の大小による付加方向の違いをNewman投影図により説明している。

以前の準安定イリドの系では基質によっては十分な選択性が得られていなかった例もあったが、今回の反応例は同一の置換基を用いて全ての例で高い選択性を得ているのが特筆すべき点だろう。
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参考)
ODOOS-Wittig反応

2010/03/29

A Highly Tunable Stereoselective Olefination of Semistabilized Triphenylphosphonium Ylides

De-Jun Dong, Hai-Hua Li and Shi-Kai Tian
DOI: 10.1021/ja910238f

Wittig反応はカルボニル化合物からオレフィンを合成する基本的な反応の一つである。アルキル基などを有する不安定イリドでは速度論的にZ-アルケンが、エステル基などを有する安定イリドではE-アルケンを生成することが知られているが、アリールやビニル基を有する準安定イリドでは生成物の幾何異性が混じることが知られいる。
この課題に対して、イリドリン原子上の置換基をフェニル基から他の置換基へ変更するアプローチが様々取られてきたが、現在のところ満足のゆく成果には至っていない。本論文では発想を転換し、求電子側であるカルボニル化合物を対応するイミンへと変更し、イミン上の置換基を調節することで選択性向上を達成している。

通常のWittig反応との類似性から、4員環のアザフォスフェタンの構造と生成するアルケンの幾何異性には相関があると考えられ、イミンの反応性を向上させるために電子吸引基を導入する方向で著者らは検討を開始した。実際には種々スルホニル基を検討し、多くの場合においてTs基がZ選択的に生成物を得られることを見いだした。興味深いことにn-ヘキサデカンスルホニル基を用いた場合にはE選択的に生成物が得られており、立体的/電子的に微妙なチューニングが選択性に効いてきていることがわかる。そのため、必要な置換基の傾向は同様であるものの、基質によってはZ/E-選択的反応に最適な置換基が変わってしまうようだ。



昔、魚住先生のインタビューで「学部レベルの教科書からテーマを探す」という言葉を読んだ記憶があるが、まさに本論文のコンセプト通りだろう。個人的にはこういった一工夫で既存の反応性を塗り替えるような反応が好きなんだなと改めて思った。

参考)
Wittig反応@ケムステーション
[PDF] 魚住泰広教授に聞く