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2011/03/07

Enantioselective Construction of Quaternary Stereogenic Centers from Tertiary Boronic Esters

Dr. Ravindra P. Sonawane, Dr. Vishal Jheengut, Dr. Constantinos Rabalakos, Dr. Robin Larouche-Gauthier, Helen K. Scott, Prof. Varinder K. Aggarwal
Angew. Chem. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201008067

4級炭素の立体選択的な構築は現代有機合成においても課題の一つである。著者らは以前紹介したように、キラル2級アルコールから、アルキル基の転位を伴う3級ボロン酸エステルの立体選択的な合成法と、酸化的処理による3級アルコールの合成を報告している。本論文では、その3級ボロン酸エステルを原料として、炭素鎖伸張による4級炭素構築法を報告している。

まずボロン酸ピナコールエステルを原料として、Matteson型の増炭反応を試みた。通常の条件では目的物の増炭アルコールに加え、酸化による単なる3級アルコールが約2割の収率で得られてきた。ホウ素NMRによる分析により、酸素転位を経た中間体が観測された。遷移状態における考察から、脱離基として嵩高く、また双極子モーメントが小さくなるものを用いることで炭素転位に繋がる配座を取りやすくなると考えられた。そこで脱離基を臭素原子としたところ、酸素転位は5%程度にまで抑えることができた。
3級ボロン酸エステルは、置換基のアルキル基が嵩高くなると予想通り反応性が低下するが、エステル部位をネオペンチル型の立体的に小さいものにすることで多少の収率改善が可能だ。またジクロロメタンとnBuLiを用いることでアルデヒドの合成も可能だ。

続いて著者らはZweifel型のオレフィン化反応を試みた。ここでも通常の条件では26%収率にとどまった。そこで再びホウ素NMRによる分析を行った所、系中ではピナコールエステルが完全にビニル基で置換された中間体と原料のみが観測された。そこでビニルグリニャール試薬の当量を増加させるたところ、良好な収率でビニル化体を得ることができた。またエトキシグリニャール試薬を用いることでケトン体を得ることもできる。

3級ボロン酸エステルも、キラル2級アルコールからなる著者らの方法論を用いることで理論的には隣接不斉中心の構築が期待できるが、この反応は立体的な要因からか進行しなかった。しかし、立体的にコンパクトな1-クロロアリルリチウムを用いることで、高いジアステレオ選択性で4級炭素を含む隣接した不斉中心の構築に成功した。ここで高いジアステレオ選択性が実現していることは、アリルリチウム種の動的速度論分割が生じていることを意味するが、その要因についてはよくわかっていない。

以上の様に、著者らは自らの方法論を拡張することで立体選択的な4級炭素構築法の開発に成功した。基質特有の嵩高さに起因する反応のしにくさを、NMRによる分析で次々と最適化していく様子は速報とは思えない盛りだくさんの内容であり、読んでいて楽しい論文であった。

2011/01/09

Tunable stereoselective alkene synthesis with nonstabilized phosphonium ylides

De-Jun Dong, Yuan Li, Jie-Qi Wang and Shi-Kai Tian
Chem. Commun., DOI: 10.1039/C0CC04739B

一般的にWittig反応では速度論支配下ではZ-オレフィンが優先するため、不安定イリドを用いた場合にはZ体が優先的に生成する。一方で不安定イリドからE-オレフィンを得るにはPhLiを用いるSchlosserの変法(β-オキシドイリド法)と言われる方法がある。本報告はアルデヒドをイミンへと変換し、イミン上の置換基を調節することで、不安定イリドを用いてZ/E体をつくりわけるというものだ。

以前このブログでも紹介したように、著者らは既に同様のアプローチにより準安定イリドを用いたZ/Eの作り分けに成功している。そこで同様にスルホニルイミンを用いて、塩基の検討を開始した。ベンズアルデヒド由来のMsイミンに対するWiitig反応では、LDAを用いた場合にはZ:E=92:8とそれなりの選択性で反応が進行し、n-BuLiを塩基とした場合には>99:1のZ選択性で生成物が良好な収率で得られた。続いてスルホニル基上の置換基を検討したところ、2-MeC6H4 (=o-Ts)基置換のスルホニルイミンでは同様にn-BuLiを塩基として<1:99のE選択性で反応が進行した。


各種基質を用いたところ、芳香族イミンだけでなく、脂肪族イミンも含めて、同様の条件で収率よく高い選択性でZ/Eを作り分けることができた。イリドの一般性としてジメチルアミノ基や1級アルコールを有するイリドでも収率、選択性を損なうこと無く反応が進行し、アリルアミンやアリルアルコールを得ることに成功している。

反応機構解析の一貫として、著者らは付加後に生じるベタイン中間体を低温下、HBr処理することでホスホニウム塩として得ている。ここで得られたホスホニウム塩はジアステレオ混合物であり、このジアステレオ比と、ホスホニウム塩を塩基処理することで得られるオレフィンのZ/Eに強い相関があることから、イリドによるジアステレオ選択的な付加が反応の選択性を決定しているとしている。そしてスルホニル基の置換基の大小による付加方向の違いをNewman投影図により説明している。

以前の準安定イリドの系では基質によっては十分な選択性が得られていなかった例もあったが、今回の反応例は同一の置換基を用いて全ての例で高い選択性を得ているのが特筆すべき点だろう。
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参考)
ODOOS-Wittig反応

2010/12/21

Catalytic Silicon-Mediated Carbon−Carbon Bond-Forming Reactions of Unactivated Amides

Shu Kobayashi*, Hiroshi Kiyohara, and Miyuki Yamaguchi
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja108764d

「シリルエノールエーテルを求核種とする向山型の反応は、非常に信頼性の高い方法論ではあるが、塩基およびケイ素由来の化学量論量の副生成物が生じることから原子効率の観点から望ましいとはいえない。」このくだりは有機分子触媒あるいは金属触媒を用いるいわゆる直接的な反応における背景の枕詞として用いられている。しかしながら、触媒量のケイ素試薬のみで反応が進行する方法論が開発されたなら、事前に求核種を調製することに由来する安定感からは遠ざかることになるが、原子効率の弱みはなくなる。本報告はシリルトリフレートを触媒とし、単純アミドを求核種とした直接的マンニッヒ型反応に関するものだ。

シリルエノールエーテルを用いたアルドール反応やマンニッヒ型反応では反応後には、酸素-ケイ素結合、あるいは窒素-ケイ素結合が形成されるため、触媒量のケイ素にて反応を進行させるにはこういったヘテロ原子-ケイ素結合を切断する必要がある。著者らは恐らくより切断が容易と考えられる窒素-ケイ素結合に注目し、マンニッヒ型反応にて検討を開始することとしたのだろう。アセトフェノンを基質として、触媒量のシリルトリフレートとピリジンを用いてイミン窒素上の活性化基を検討した所、Ts基を用いると触媒回転が起きることがわかった。さらに塩基をトリエチルアミンへと変更し、α位の酸性度が低いアミドを基質とした所、反応が進行し良好な収率でマンニッヒ体を得た。エステルやチオエステルでは反応が進行しないことから、α位の酸性度とカルボニル酸素のルイス塩基性のバランスが重要であることがわかる。最終的には嵩高いTIPSOTfを触媒として5 mol%用いるだけでTsイミンへの付加が定量的に進行した。


基質一般性を検討した所、種々の芳香族イミン、脂肪族イミンへの付加が定量的に進行した。アミドをラクタムへとしたところ、反応性の低下が見られたが共触媒としてCuOTfを添加すると高い収率、ジアステレオ選択性で目的物が得られた。さらに初期的な段階ではあるが、CuOTfにキラルリン配位子を組み合わせることで中程度の不斉誘起も実現している。

本論文の肝は、アミドのケイ素エノラートを経て反応が進行していることであり、著者らもそのことを示すべく様々な実験系を試みている。しかしNMRなどによる直接の観測には至っておらず、反応条件では窒素原子からの押し出しによるイミノエーテル塩を単離するだけである。著者らは、1) 別途調製したアミドエノラートでは反応が進行するが、低ジアステレオ選択性であること、2) イミノエーテル塩では反応が進行しないが、塩基を加えると高ジアステレオ選択的に反応が進行すること、などの実験結果から系中では低濃度のアミドエノラートが生成し、非環状型の遷移状態を経て反応が進行していると主張している。

アミドのエノラートは安定性が低いことが多く、通常C-エノラートとO-エノラートの混合物であると言われていることから、反応機構解析には相当の時間をかけていることが推察されるが、最終的にはかなり説得力のあるデータを提示しているあたり、さすがである。不斉収率の向上にあたってはスルホニル基を調整するのが最短だろうが、キラルケイ素エノラートができたらおもしろそうだ。

2010/12/08

Facile Dearomatization of Nitrobenzene Derivatives and Other Nitroarenes

Dr. Sunyoung Lee, Dr. Isabelle Chataigner, Prof. Serge R. Piettre
Angew. Chemie Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201005779

その安定性ゆえに芳香族化合物の芳香族性を崩すような反応を行うには、金属触媒などによる活性化を必要とする場合が多い。本報告ではアゾメチンイリドと芳香族二重結合との[3+2]環化反応を金属触媒なしに進行させている。電子不足オレフィンとしてニトロ基で置換された芳香族を用いているのがポイントである。

前述のようにニトロベンゼンを電子不足2π系に用いることにし、反応性が高いと考えられる不安定型のアゾメチンイリドを4π系として反応を試みた。しかしイリドの二量化が見られるのみで望みの環化体は得られなかった。そこでさらなる反応性向上を期待してm-ジニトロベンゼンを2π系として用いている反応を行った。するとイリド2分子とジニトロベンゼンが反応した生成物がよい収率で得られた。この結果から最初の芳香族性を崩す反応には2つのニトロ基による強力な活性化が必要であるが、2回目の反応は速やかに進行したことがわかる。


続いてニトロ基ともう1つ別の電子吸引基を有する基質で反応を行ったところ、エステルのような電子吸引基でも反応が進行することがわかった。さらに1-ニトロナフタレンでも反応は進行し、2-ニトロチオフェンのようなヘテロ芳香族でも生成物を得た。後者の場合には1分子のイリドが付加したのみの生成物が得られている。1-ニトロナフタレンが反応することから、反応にあたってはニトロベンゼンよりも少しだけ反応性が高いだけでよいことが想定される。イリド生成に用いているTFAの役割であるが、ニトロベンゼンが強酸中でも安定であることから、当初の想定通りにイリド生成にのみ作用しているとして、著者らは協奏的、あるいは段階的な機構を提唱している。

ジニトロベンゼンでは使い勝手が悪いだろうが、1-トシルピロールやキノリンNーオキシドなどの複素環を用いた例は、比較的小さい分子中に複数の窒素原子が適度な距離に配置されることになり、おもしろい骨格に感じられる。

2010/11/23

Remote Stereoinduction in the Acylation of Fully Substituted Enolates

Stephen N. Greszler, Justin T. Malinowski, and Jeffrey S. Johnson*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja108848d

エノラートのエステルによるαーアシル化反応、Claisen縮合では生成物の活性メチレン部位の脱プロトン化が容易に進行するため、α位に不斉点を導入することが難しい。また逆反応の容易さからα,α-二置換エノラートを用いた4置換炭素構築の試みは困難であるとされている。本報告ではアシル化剤としてβ-ラクトンやラクタムを用いることで、4員環の歪みを利用して逆反応を抑える工夫がなされている。

著者らは既にReformatsky試薬のシリルグリオキシレートへの付加から生じた中間体がBrook転位により亜鉛エノラートへと変換されること、および生じた亜鉛エノラートがケトンと反応することでγ-ラクトンが得られることを報告している。その知見を基にケトンの代わりにβ-ラクタムを用いれば、環の歪みから逆反応が起こらずにアシル化反応が進行すると考えた。実際に検討を行った所、Reformatsky試薬、シリルグリオキシレート、ラクトンの3成分を混ぜることで所望のα位が4置換のエステルが高いジアステレオ選択性で得られた。以前の反応では過剰量のReformatsky試薬がケトンと反応してしまうために、Brook転位による亜鉛エノラートの生成後に段階的なケトンの添加が必要であったが、今回の系ではラクトンの反応性の低さから3成分を混合しても副反応は観測されなかった。β位に不斉点を有するβ-ラクトンは比較的容易に入手可能なことから、高いジアステレオ選択性が得られていることは魅力的だろう。


その他の基質に対しても反応を行ったところ、総じて高いジアステレオ選択性で目的物が得られている。第一段階のシリルグリオキシレートへの付加の変換効率にもよるが、収率が中程度の基質が多いのが気になる点といえる。なおβ-ラクトンの代わりにβ-ラクタムも適応可能であるが、ジアステレオ選択性は出ていない。この選択性発現機構に関しては環状遷移状態の図で著者らは説明しているが、少しわかりにくいように感じられた。生成物のアシル化部位は条件により二つのジアステレオマーへと選択的な還元が可能で、また二つのエステル部位も立体的環境がかなり異なることもあり、一般的な条件で差別化が達成可能となっている。

α,α-二置換エノラートを用いる際にはエノラートの幾何異性の制御が一つのポイントになるが、本反応では亜鉛とのキレートおよび立体的な要因により(E)-エノラートが選択的に生成しているようだ。一番安価で入手容易なブロモ酢酸エチルが2.3当量という点はまだ実用的で、ワンポットで多官能基化された化合物が得られる魅力的反応といえるだろう。

2010/10/03

A Straightforward Route to Functionalized trans-Diels−Alder Motifs

Jun Hee Lee, Yandong Zhang, and Samuel J. Danishefsky*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja1073855

環状ジエノフィルとジエンとのDiels-Alder反応では、通常cisに縮環した化合物が得られる。transに縮環した化合物を得たい場合、Diels-Alder型の反応で直接得ることができれば魅力的であるが、現在の所成功例はない。本報告はcis縮環型の化合物を経た後にtrans体へと変換するというもので、シンプルな発想に思われるが、このようなアプローチは今までなかったとのこと。

著者らは既に、cisに縮環した橋頭位にニトロ基を有する化合物で還元条件により立体反転を伴って水素化を行わせることに成功している。この前例には、1) 水素化以外のアルキル化は立体的な要因で進行しなかった、2) ジエノフィルがニトロシクロアルケンに限定的で生成物が官能基化されていない、3) ジエノフィルの反応性が低い、といった問題を抱えていた。そこで今回注目したのはアルミニウム触媒を用いたα-ブロモシクロへキセノンのDiels-Alder反応だ。これによって官能基化されたcis-デカリン構造を効率よく合成することができた。


得られたcis-デカリン体を用いてまずはBu3SnHを用いた水素化を検討した所、望みのtrans体を主生成物として水素化体を得ることができた。そこで続いてアルキル化の検討を行うこととした。検討の結果、リチウムナフタリドを用いて反応性の高いリチウムエノラートを生成させることが重要だと判明した。ヨウ化メチルをメチル化剤とした場合にはtrans/cis比率がよくて3/1程度だったが、Trostが開発したPhSCH2Iをアルキル化剤とし、反応後にRaney Niで脱硫するプロセスを経ることでtrans体の選択性を7/1~>30/1にまで上昇させることに成功している。6-6のデカリン構造だけでなく、5-6の縮環構造でも成功している点が魅力的だ。得られた生成物の2重結合に関しては、オスミウムによる酸化や、スルフィドの酸化後にPummerer型の反応を行うことでさらなる官能基化を実践している。

Raney Niによる脱硫など多少回りくどい面もあるが、共通原料から様々な構造を作り分けるという観点からは興味深い試みだろう。本報告は既存のDiels-Alder反応では直接構築できない骨格を得ているという点では、以前取りあげたシクロブテノンを用いた反応と類似している。Danishefskyの最近の興味がどのような点にあるのかはわからないが、今後の展開を追っていきたい。

2010/07/17

Stereoselective Synthesis of Tertiary Ethers through Geometric Control of Highly Substituted Oxocarbenium Ions

Lei Liu, Paul E. Floreancig, Prof. Dr. *
10.1002/anie.201002281

炭素と水素の大きさを区別するのは容易だが、炭素鎖と炭素鎖の大きさを区別するのは難しい。これがアルデヒドへの付加と比べてケトンへの付加において立体選択性を出すのが難しい要因だ。同様にオキソカルベニウムイオン中間体も1,1-二置換体となると幾何異性の制御が難しくなり、結果として得られるエーテルの選択性低下につながる。本報告ではこのような1,1-二置換オキソカルベニウムイオンの幾何配向について調べ、分子内環化反応により立体選択的な3級エーテル合成へと応用している。

研究の発端は著者らの実験において、通常はE-体のオキソカルベニウムイオンを取るはずのモノ置換体が、置換基がアルキニル基の場合には、約1:1の割合に由来する生成物を得たことに起因する。このことから二置換のイオン中間においてもアルキニル基を有する基質ならば幾何異性の制御が可能なのではないかと考えたようだ。



DDQにより生成させたカルベニウムイオン中間体を分子内で6員環遷移状態を経て補足するような基質をデザインして、実際の検討を行った。メチル基と比べると、アルキニル基はより小さい置換基にあたり、アルケニル基やアリール基はより大きい置換基にあたることがわかった。またオキソニウム根本の立体配置は生成物の立体配置に無関係であることが、想定通りの中間体としてオキソカルベニウムイオンが生成していることを示唆している。他に著者らは、モノ置換オキソニウムに対する求核側のリンカーの立体配置との関係も検討している。さらに条件は多少異なり、収率も不満が残るが、分子間反応への可能性についても初期的な知見を得ている。

本報告の結果は、著者らの全合成研究の結果から得たものだと思われ、彼らの興味はこれを複雑な分子の合成へと応用することにあるようだ。しかし反応開発という側面から見ると、この中間体を酸化条件に耐える炭素求核種などで分子間で補足できれば魅力的な反応になりそうに思える。また山本尚先生の嵩高いアルミニウム錯体によるアセタールの選択的開環など、オキソニウムの試薬による制御はよく研究されているので、本報告で見られたような選択性が逆転するような酸化剤や反応条件を見いだせたらおもしろい。

2010/07/16

A Versatile and Stereoselective Synthesis of Functionalized Cyclobutenes

Frédéric Frébault, Dr., Marco Luparia, Dr., Maria Teresa Oliveira, Richard Goddard, Dr., Nuno Maulide, Dr. *
10.1002/anie.201000911

炭素4員環のシクロブタン、およびその誘導体は天然物によく見られる構造であるのに加え、歪みのかかった構造に起因する様々な反応性は有機合成化学、構造化学の面からも興味深い分子群だ。シクロブタノンやシクロブテノンに関しては比較的研究が進められているのに対し、シクロブテンについては二重結合を有することからさらなる合成展開が可能となるなど魅力的な構造であるものの、その合成法の開発は余り進んでいない。

よく知られた方法論として、アセチレンと無水マレイン酸との光環化反応があげられ、その後の非対称化反応も含めてよく研究されている。シクロブテン合成には他にも2-パイロンを原料とした光による異性化反応も知られているが、異性体であるラクトンが不安定で爆発危険性を有するなどの理由から、こちらの分子の反応性については研究が進められていなかった。本報告はこのラクトンを様々な多官能基分子へと変換する方法論に関するものだ。



不安定とされるラクトンであるが、光反応により異性化は定量的に進行し、エーテル溶液として0.1から0.2M程度の溶液として保管することが可能のようだ。この溶液を用いて著者らはパラジウム触媒と、マロン酸エステルのエノラートなど活性カルボニル化合物系統の求核種の組み合わせにより、ラクトンの開環反応を行っている。収率は中程度から良好で、非対称の求核種を用いた場合にはジアステレオ選択性もほぼ完璧とのことだ。

求核種としてアミノ酸由来のアズラクトンを用いた場合には、対応する付加体ではなく、閉環形式の変更されたラクタムが得られている。ベンゾイル基に電子吸引基を導入することで収率、立体選択性を最適化することが可能で、ベンジル基などのかなり大きな置換基もα位に導入可能となっている。

本反応のウリは生成物のさらなる変換によりさまざまな官能基化を行っていることだろう。シクロブテン中の二重結合はオスミウムによるジオール化、メタセシスによる開環、ヨードラクトン化など、収率は必ずしも高くないけれど原料の2-パイロンからたった3段階でおもしろい分子群に到達しているのが非常に興味深い。論文の最後ではTrost型の配位子を用いた速度論分割も行っている。



安定性などに問題があるために、これまで見過ごされてきた分子に光を当てる本論文のような研究は、化学研究の醍醐味の一つなのではないだろうか。

2010/06/27

Full Chirality Transfer in the Conversion of Secondary Alcohols into Tertiary Boronic Esters and Alcohols

Viktor Bagutski, Dr., Rosalind M. French, Varinder K. Aggarwal, Prof. *
10.1002/anie.201001371

不斉4置換炭素の構築は、原理的に不斉水素化反応を用いて直接構築することは不可能であり、立体的に嵩高い炭素部位にさらに炭素骨格(または酸素や窒素)を導入することが必要となる。そのため、近年発展の著しい触媒的不斉合成の分野においても、炭素ー炭素結合形成と不斉導入を同時に行う反応では、収率、不斉収率ともに改善の余地を残すものが多い。一方で、不斉補助基を用いた既存の不斉点を利用する反応形式ではすぐれたものも多数報告されている。

本報告では、キラル2級アルコールがアリールアルキルケトンの不斉水素化反応により容易に調整可能であることを着眼点として、不斉点を維持したままアルキル基を導入するという反応だ。オリジナルは既に2008年にNature誌に報告しており、本論文では条件の改良により、当時の系では満足のいく不斉収率を得ることができなかった基質でも高い不斉収率にて目的物を得ることができたと報告している。

反応の全体像は以下の通り。1)カーバメートとのキレーションによるsec-BuLiを用いたプロトン化、2)不斉を維持したままピナコールボランとのアート錯体形成、3)ホウ素上のアルキル基の1,2-転位とそれに伴うカーバメートの脱離、以上の工程を経てキラル3級ホウ素化合物が生成する。これを酸化的にアルコールへと変換することで、3級アルコールの合成が完了する。

種々の実験により、著者らは2)と3)の工程における平衡がee減少に重大な寄与をしていると結論づけた。すなわち、アート錯体形成後に昇温することで転位が起こるが、基質によっては転位よりもアート錯体の解離が速やかにおこるものもあり、昇温下でのリチウム種が反転することでeeの低下へと繋がるというものだ。



そこで検討を重ねた結果、臭化マグネシウムとメタノールの組み合わせがよい影響を与えることが明らかとなった。ここでは、臭化マグネシウムはルイス酸としてカーバメートに配位することで1,2-転位を促進させ、メタノールはアート錯体の解離により少量生じたアルキルリチウム種のプロトン化を行っていることになる。

3級ホウ酸エステルは前述した通り、3級アルコールへの魅力的な前駆体であるが、本反応で用いたピナコール誘導体では、酸化反応が遅いためにone-potによる酸化的開裂ができず溶媒をエーテルからTHFへと変更する作業が必要になってしまうようだ。筆者らは立体的により小さなネオペンチル型のホウ酸誘導体を合成することで、酸化がはやく、さらに上記の臭化マグネシウム/メタノールの添加を経なくとも高い不斉収率を達成することができたとも報告している。

このように酸化段階で難のあるピナコール型と、試薬調整段階で難のあるネオペンチル型と二つの条件を報告しているが、市販されている試薬類の豊富さからも前者に分があるように感じる。
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前報のNatureの報告:この論文では、用いるホウ素試薬をホウ酸エステルとアルキルボランに分けることで、得られる成績体の絶対配置が異なることをウリにしている

2010/04/29

Tandem β-Alkylation−α-Arylation of Amines by Carbolithiation and Rearrangement of N-Carbamoyl Enamines

Jonathan Clayden*, Morgan Donnard, Julien Lefranc, Alberto Minassi and Daniel J. Tetlow
DOI: 10.1021/ja1007992

tert-アルコールの立体選択的合成が対応するケトンへの付加が立体的に込み入っているために難しいのと同様に、tert-アミンの合成も対応するケトイミンの嵩高さのために難しい。代替合成法としては例えばニトロアルカンを求核剤として用いた反応や、Overman転位などの転位反応を用いたアプローチが考えられる。本報告ではビニルウレアへのリチウム試薬への付加と続く分子内からの転位を経て、tert-アミンの合成を達成している。

反応の全体像は、ビニルウレアへのアルキルリチウムの付加の後、生じた中間体からアリール基が分子内転位し、メタノールで反応を止めることで4置換炭素を有するウレアを得ている。得られたウレアはn-ブタノール中で加熱することでウレア部位を除去し、アミンを合成することが可能となっている。



アルキルリチウムはtert-ブチルのような嵩高いものを用いると転位反応が進行しないものの、様々なアルキル基、アリール基を導入可能だ。また転位させるアリール基も電子供与基、吸引基ともに適応可能となっており、多くの例で良好な収率で置換ウレアを得ている。基質のアルケニル基がZ,Eの異性体を有する基質を用いた場合には、それぞれのジアステレオマーが選択的に得られていることから、付加、転位ともに立体特異的に進むことが示唆されている。

本反応は合成方法の少ないtert-アミンを高収率に合成可能な方法論であり有用性が高いだけでなく、反応機構的にも興味深い反応だ。恐らく狙っていたわけではなく偶然の副反応から到達した反応だろうが、こういうものをきちんと拾って形にすることって大事だなとしみじみ思った。

2010/04/19

Asymmetric Rh(I)-Catalyzed Addition of MIDA Boronates to N-tert-Butanesulfinyl Aldimines

Katrien Brak and Jonathan A. Ellman
DOI: 10.1021/jo100318s

Ellmanグループといえばtert-ブチルスルフィニルイミンを用いたキラルアミン合成を精力的に研究している。本報告ではロジウム触媒を用いたアルケニル基のイミンへの付加反応であるが、アルケニル源を以前に報告していたKBF3RではなくMIDAを用いた所、収率の面で優れていることがわかったというものだ。
MIDA(N-methyliminodiacetic acid)は最近急速に広まっているホウ酸源である。特徴としてはカラム生成可能なほどの安定性を持ちながら、容易に調製可能な点であり、さらにアルドリッチ社から様々な誘導体が購入可能となりつつある。以前のカリウム塩をアルケニル源とした場合には、反応条件下において分解/二量体化などの副反応が進行してしまい低収率に終わるものがあった。そこで今回、より安定なMIDA誘導体を用いて検討を行うに至ったようだ。



反応はH2O/dioxaneの2層系で行われており、MIDAから徐々にホウ酸が放出されることで反応が進行することになる。このため、加水分解のおきにくい芳香族イミンでは高収率にて反応が進行するものの、容易に加水分解の起きる脂肪族イミンでは思うように反応が進行しないという欠点を有している。
触媒的不斉反応の進歩が著しい現代有機化学においても、Ellmanのジアステレオ選択的な反応は依然として有用度が高く、こういった手法をきちんと抑えておくことは大事。
ーー
参考)
Aldrichmica ActaのMIDAの総説(PDF)

2010/04/05

Highly Diastereoselective Preparation of Homoallylic Alcohols Containing Two Contiguous Quaternary Stereocenters

Bishnu Dutta, Noga Gilboa and Ilan Marek*
DOI: 10.1021/ja101371x

4級炭素や4置換炭素の立体選択的な構築反応は、中心炭素周りの立体的な混雑さと、水素原子よりも大きな原子群間の違いを認識する必要があるため難しい反応である。
本論文はこのように立体的に込み入った隣接4級炭素ー4置換炭素をジアステレオ選択的に構築する反応を報告している。

筆者らの作業仮説は下図のようになる。すなわち末端アルキンに対して、アルキル銅試薬がシス付加をすることでビニル銅試薬を生成、ここにジアルキル亜鉛試薬とケトンを添加することで、亜鉛カルベノイドとビニル銅からアリル亜鉛試薬が生成し、これがケトンへと付加することで望みの成績体を与えるという物だ。



このメカニズムにはいくつかの課題がある。亜鉛試薬とケトンを添加する際に、ビニル銅や亜鉛試薬がケトンへと反応せずに、亜鉛カルベノイドが生成し、ビニル銅と反応することで立体を保持したアリル亜鉛種が生成すること。続いて生成したアリル亜鉛種が、立体を保持したまま、立体選択的にケトンへと付加することだ。
実際にアセトフェノンとエチルグリニャール試薬を用いて反応を行ってみると、高いジアステレオ選択性にて目的物が得られ、この立体選択性は環状遷移状態によって説明ができた。また反応を−50℃よりも高温で行った場合には選択性が低下したことから、著者らはアリル亜鉛の金属キレトロピー平衡によって立体が混じったことによると推察している。またより低温では反応の進行が極めて遅かったようである。
アセトフェノンよりも嵩高いケトンや、エチル基よりも大きいグリニャール試薬を用いた場合には選択性が10:1程度にまで低下してしまうのが惜しいが、エステルを有する基質やヘテロ芳香族、エノンなどにも適応可能であり、官能基受容性はまずまずといえる。

様々な試薬を次々と添加していくため、少し反応操作が煩雑かなとも感じるが、反応の特性上仕方がないだろう。現状ではこういった4級炭素の立体選択構築反応は選択肢が乏しいので、今後情報が蓄積されてくれば産業的にも応用が広がっていくのではないだろうか。

2010/03/29

A Highly Tunable Stereoselective Olefination of Semistabilized Triphenylphosphonium Ylides

De-Jun Dong, Hai-Hua Li and Shi-Kai Tian
DOI: 10.1021/ja910238f

Wittig反応はカルボニル化合物からオレフィンを合成する基本的な反応の一つである。アルキル基などを有する不安定イリドでは速度論的にZ-アルケンが、エステル基などを有する安定イリドではE-アルケンを生成することが知られているが、アリールやビニル基を有する準安定イリドでは生成物の幾何異性が混じることが知られいる。
この課題に対して、イリドリン原子上の置換基をフェニル基から他の置換基へ変更するアプローチが様々取られてきたが、現在のところ満足のゆく成果には至っていない。本論文では発想を転換し、求電子側であるカルボニル化合物を対応するイミンへと変更し、イミン上の置換基を調節することで選択性向上を達成している。

通常のWittig反応との類似性から、4員環のアザフォスフェタンの構造と生成するアルケンの幾何異性には相関があると考えられ、イミンの反応性を向上させるために電子吸引基を導入する方向で著者らは検討を開始した。実際には種々スルホニル基を検討し、多くの場合においてTs基がZ選択的に生成物を得られることを見いだした。興味深いことにn-ヘキサデカンスルホニル基を用いた場合にはE選択的に生成物が得られており、立体的/電子的に微妙なチューニングが選択性に効いてきていることがわかる。そのため、必要な置換基の傾向は同様であるものの、基質によってはZ/E-選択的反応に最適な置換基が変わってしまうようだ。



昔、魚住先生のインタビューで「学部レベルの教科書からテーマを探す」という言葉を読んだ記憶があるが、まさに本論文のコンセプト通りだろう。個人的にはこういった一工夫で既存の反応性を塗り替えるような反応が好きなんだなと改めて思った。

参考)
Wittig反応@ケムステーション
[PDF] 魚住泰広教授に聞く

2010/03/26

An Organocatalyzed Enantioselective Synthesis of (2S,3R,4S)-4-Hydroxyisoleucine and Its Stereoisomers

Gullapalli Kumaraswamy*, Neerasa Jayaprakash and Balasubramanian Sridhar
DOI: 10.1021/jo100233u

フラン環がカルボン酸等価体であることを利用して、γ-ヒドロキシルイソロイシンを合成しましたという論文。こう書くと単純だが、個人的に2-フリルアルドイミンがアミノ酸等価体であるということを今まで意識したことがなかったのでメモがてら紹介。

逆合成を下に示すが、要するにフリルイミンとアルデヒドを有機分子触媒(Jorgensen型のTMS-ジフェニルプロリノールと林先生のシリルオキシプロリン)を用いた触媒的不斉マンニッヒ型反応でジアステレオ選択的に骨格を構築し、アルデヒドに対してグリニャール試薬をアミドを足がかりにジアステレオ選択的に付加させてるということだ。



論文としては上述した着想が内容の全てであり、一応形にするためにanti-syn, anti-antiの両ジアステレオマーを両エナンチオマー作っているが、評価ポイントにはならないだろう。学術的なレベルはさておき、用いるグリニャール試薬を変えたり、マンニッヒ型反応のパートナーを変えることで種々のアミノ酸誘導体を作ることができそうで何かの役に立つかもしれない。

2010/03/25

Asymmetric Tandem Wittig Rearrangment/Mannich Reactions

Natalie C. Giampietro, John P. Wolfe, Prof.
10.1002/anie.201000609

α位に二つの置換基を有するカルボニル化合物のエノラートは、E/Z幾何異性体の作り分けが難しく、そのため生成物のジアステレオ選択性に難があることが多い。さらにエステルα位のpKaの高さから、エステルエノラートを用いた直接的アルドール/マンニッヒ反応の例はまだまだ少ない。
本報告は[1,2]-Wittig転位を利用して、αーヒドロキシ-αーアルキルエステルエノラートを選択的に作りマンニッヒ型反応を行うことで、立体選択的に4置換炭素を有するβアミノ酸誘導体の合成に成功している。
本反応の肝は幾何異性を制御したエノラートの生成であるが、これは恐らくヒドロキシル基によるホウ素原子へのキレーション効果によることが多いと推察される。N-アルキル(ベンジル)イミンを用いたマンニッヒ型反応は収率はやや低いものの、高ジアステレオ選択的に進行するようだ。またエノール化しやすい脂肪族アルデヒド由来のイミンについても、スルフィニル基を有するイミン前駆体を用いることでまずまずの収率で目的物を得ている。



興味深いことはイミンを用いた場合にはsyn体が取れたものの、イミン前駆体を用いた場合にはanti体が得られている点だ。著者らは環状型遷移状態と非環状型遷移状態の図を描くことで説明している。しかし、立体選択性の違いは結果としては環状/非環状の違いに起因すると思われるが、後者の場合にプロトン化されたイミニウムカチオンの立体的嵩高さをあげており塩基性条件下におけるこの状態図には疑問が残る。
また細かいけれど、この論文では不斉補助基を用いて不斉を導入しているわけで、タイトルには"Asymmetric"とあるが"Diastereoselective"が適切なのではないかと考えてしまう。いずれにせよ、まだまだ珍しいα、αー二置換のエステルエノラートを積極的に利用した反応で、その生成機構もWittig転位を利用するという興味深い論文だといえる。

2010/03/12

Overriding Felkin Control: A General Method for Highly Diastereoselective Chelation-Controlled Additions to α-Silyloxy Aldehydes

Gretchen R. Stanton, Corinne N. Johnson and Patrick J. Walsh
DOI: 10.1021/ja910717p

学部後期以降の教科書には必ず書いてある、α位に不斉炭素を有するカルボニル化合物への求核付加反応、すなわちFelkin-AhnモデルとCram-chelationモデル型の付加反応というものが知られている。特に80年代から90年代初頭の全合成ではマクロライドの立体制御などを行うのに頻用されてきた手法である。
これらではαーヒドロキシル基を有する化合物は嵩高いシリル基を用いて酸素原子の不対電子をマスクすることで前者のモデル、ベンジル基のように酸素の不対電子を利用可能にすることで後者のモデルで付加が進行するように調整することが可能である。
しかし、保護基というのは合成戦略全体から考えて選択する物であり、付加反応に於ける立体選択性のために保護期のかけかえが行われるようなことは望ましくない。
このような基質制御型の反応を逆に制御するためには、例えば不斉補助基の導入、キラルな試薬の利用、不斉ルイス酸の添加といった方法論が用いられることが多いが、両論量のキラル源が必要な場合等改善の余地が多い。

前置きが長くなったが、本論文はこのような問題に対して、アキラルな試薬を用いて通常Felkin-Ahn型で進行する試薬をCram型で反応させることを試みている。

反応の概略としては下図に示すように、α位にTBS基で保護されたヒドロキシル基を有するカルボニル化合物に対して、RZnX(Cl,Br,OTf)をルイス酸、ZnR2を求核種として用いることでCram型付加に由来する化合物が高いジアステレオ選択性でとれるというものだ。



収率は化合物によって変動があるが、恐らく亜鉛試薬の求核性の低さもあり、カルボニル化合物が還元されてしまうアルコール体が取れてきてしまうために中程度の収率にとどまる基質が多い。しかしながら多置換ビニル試薬を含めて、官能基化された求核種の導入にも成功しており、注目度は高い。

本反応のポイントとしては求核性の低い亜鉛試薬を用いることで、バックグラウンドのFelkin-Ahn型付加を押さえていることにあるだろう。
逆に現時点での弱点としては、ルイス酸/求核種共に亜鉛試薬であるために、アルキル基交換が行われてしまい、結局すべてのアルキル基を導入したいものにしないといけない点だろう。これは全合成などで官能基化された貴重なアルキル基を導入したい場合に大きく効いてくるため、キュープレート試薬のようなダミーリガンドを載せられるように改良できたらより魅力的になるだろう。
また亜鉛であるがゆえに還元体が取れてしまうなら他の金属で達成不可能かの精査もありうる。個人的には根岸先生のようなアルミニウムに魅力を感じるがどうだろう?