2010/12/08

Facile Dearomatization of Nitrobenzene Derivatives and Other Nitroarenes

Dr. Sunyoung Lee, Dr. Isabelle Chataigner, Prof. Serge R. Piettre
Angew. Chemie Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201005779

その安定性ゆえに芳香族化合物の芳香族性を崩すような反応を行うには、金属触媒などによる活性化を必要とする場合が多い。本報告ではアゾメチンイリドと芳香族二重結合との[3+2]環化反応を金属触媒なしに進行させている。電子不足オレフィンとしてニトロ基で置換された芳香族を用いているのがポイントである。

前述のようにニトロベンゼンを電子不足2π系に用いることにし、反応性が高いと考えられる不安定型のアゾメチンイリドを4π系として反応を試みた。しかしイリドの二量化が見られるのみで望みの環化体は得られなかった。そこでさらなる反応性向上を期待してm-ジニトロベンゼンを2π系として用いている反応を行った。するとイリド2分子とジニトロベンゼンが反応した生成物がよい収率で得られた。この結果から最初の芳香族性を崩す反応には2つのニトロ基による強力な活性化が必要であるが、2回目の反応は速やかに進行したことがわかる。


続いてニトロ基ともう1つ別の電子吸引基を有する基質で反応を行ったところ、エステルのような電子吸引基でも反応が進行することがわかった。さらに1-ニトロナフタレンでも反応は進行し、2-ニトロチオフェンのようなヘテロ芳香族でも生成物を得た。後者の場合には1分子のイリドが付加したのみの生成物が得られている。1-ニトロナフタレンが反応することから、反応にあたってはニトロベンゼンよりも少しだけ反応性が高いだけでよいことが想定される。イリド生成に用いているTFAの役割であるが、ニトロベンゼンが強酸中でも安定であることから、当初の想定通りにイリド生成にのみ作用しているとして、著者らは協奏的、あるいは段階的な機構を提唱している。

ジニトロベンゼンでは使い勝手が悪いだろうが、1-トシルピロールやキノリンNーオキシドなどの複素環を用いた例は、比較的小さい分子中に複数の窒素原子が適度な距離に配置されることになり、おもしろい骨格に感じられる。

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