2010/12/31

Ligand-Assisted Rate Acceleration in Lanthanum(III) Isopropoxide Catalyzed Transesterification of Carboxylic Esters

Manabu Hatano, Yoshiro Furuya, Takumi Shimmura, Katsuhiko Moriyama, Sho Kamiya, Toshikatsu Maki, and Kazuaki Ishihara*
Org. Lett., DOI: 10.1021/ol102753n

エステルの合成法としては対応するカルボン酸とアルコールの縮合、およびメチルエステルやエチルエステルなど既存エステルとアルコールを用いたトランスエステル化があげられる。前者では縮合剤由来の廃棄物やカルボン酸の溶解性が問題となることが多々ある。後者では溶解性の問題は解決されることが多いものの、立体的に込み入った2級や3級アルコールに対しても適応可能な方法論が少なく、さらに触媒量の促進剤で反応が進行する例はきわめて少ない。本報告では触媒量のランタンと適切な配位子を組み合わせることにより、3級アルコールを含む様々なアルコールに適応可能なトランスエステル化反応を発表している。

ルイス酸を促進剤としたトランスエステル化は例えば古くはSeebachらによるTiを用いた例など4族金属の利用例が多い。一方で基質一般性はあまり高いとは言えないものの、触媒量のLa(OiPr)3やLa(OMe)(OTf)2を用いた例も報告されていることから、著者らはルイス酸性と金属アルコキシドの求核性を適切な配位子によって調節することで、さらなる反応性の増大が期待できると考えた。安息香酸メチルと5-ノナノールを用いてジグリムなどの多配位型の配位子を中心に検討をおこなったところ、ジエチレングリゴールモノメチルエーテルが最適だった。さらにランタン源として用いたLa(OiPr)3の安定性の問題からか、錯体形成時間を経ることなく基質を加えた方が収率がよいことも明らかとなった。


そこで当量のエステルとアルコールを用いて基質一般性の検討をおこなった。1級、2級アルコールだけでなく、アダマンタノールのような嵩高い3級アルコールや、ステロイド骨格を有するアルコールにも適応可能であるが、フェノール誘導体には適応できない。またエステル側がα,β-不飽和型であっても望みの生成物が得られている他、α位に不斉点を有するエステルも不斉収率を損なうことなく反応が進行する。用いるエステルはピバロイル基のように嵩高いものでも問題ないようだ。さらに本手法は1級アミンや2級アミン共存下でもアルコールのみを選択的に活性化することで、アミドではなくエステルが優先的に得られる。

論文中では他の著者らによるランタンを用いた反応の想定遷移状態やESI-MSによるピークから、基質双方を活性化するランタン-ランタンの2核錯体型の遷移状態を想定している。この遷移状態ではランタンに対して配位子が2倍量必要ない気もするが、反応前に速やかに錯体を形成することでランタンの安定化に寄与しているのかもしれない。

本反応は基質はどちらも1当量のみでよく、短時間に反応が完結することから魅力的な反応である。使用しているLa(OiPr)3の安定性に不安があるものの、合成戦略上メチルエステルをベンジルエステルに変換する、塩基に非常に弱いアルコールに酢酸エチルを用いてアセチル基を導入する、ラセミ基質のジアステレオマーによる分割を行うなど、カルボン酸側、アルコール側どちらからも用途が考えられる。また著者らは引き続いて同様のコンセプトによる炭酸ジメチルやメチルカーバメートを用いたカーボネート、およびカーバメート合成についても報告している。

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