2010/04/05

Highly Diastereoselective Preparation of Homoallylic Alcohols Containing Two Contiguous Quaternary Stereocenters

Bishnu Dutta, Noga Gilboa and Ilan Marek*
DOI: 10.1021/ja101371x

4級炭素や4置換炭素の立体選択的な構築反応は、中心炭素周りの立体的な混雑さと、水素原子よりも大きな原子群間の違いを認識する必要があるため難しい反応である。
本論文はこのように立体的に込み入った隣接4級炭素ー4置換炭素をジアステレオ選択的に構築する反応を報告している。

筆者らの作業仮説は下図のようになる。すなわち末端アルキンに対して、アルキル銅試薬がシス付加をすることでビニル銅試薬を生成、ここにジアルキル亜鉛試薬とケトンを添加することで、亜鉛カルベノイドとビニル銅からアリル亜鉛試薬が生成し、これがケトンへと付加することで望みの成績体を与えるという物だ。



このメカニズムにはいくつかの課題がある。亜鉛試薬とケトンを添加する際に、ビニル銅や亜鉛試薬がケトンへと反応せずに、亜鉛カルベノイドが生成し、ビニル銅と反応することで立体を保持したアリル亜鉛種が生成すること。続いて生成したアリル亜鉛種が、立体を保持したまま、立体選択的にケトンへと付加することだ。
実際にアセトフェノンとエチルグリニャール試薬を用いて反応を行ってみると、高いジアステレオ選択性にて目的物が得られ、この立体選択性は環状遷移状態によって説明ができた。また反応を−50℃よりも高温で行った場合には選択性が低下したことから、著者らはアリル亜鉛の金属キレトロピー平衡によって立体が混じったことによると推察している。またより低温では反応の進行が極めて遅かったようである。
アセトフェノンよりも嵩高いケトンや、エチル基よりも大きいグリニャール試薬を用いた場合には選択性が10:1程度にまで低下してしまうのが惜しいが、エステルを有する基質やヘテロ芳香族、エノンなどにも適応可能であり、官能基受容性はまずまずといえる。

様々な試薬を次々と添加していくため、少し反応操作が煩雑かなとも感じるが、反応の特性上仕方がないだろう。現状ではこういった4級炭素の立体選択構築反応は選択肢が乏しいので、今後情報が蓄積されてくれば産業的にも応用が広がっていくのではないだろうか。

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