Takashi Nishikata and Bruce H. Lipshutz*
DOI: 10.1021/ol100331h
酸化的Heck反応、Fujiwara-Heck反応はC-H活性化を経て生じたパラジウム種とオレフィンとの反応であり現在のC-H活性化のブームよりもかなり早く(1969年)報告された反応だ。本報告は著者らが開発した有機分子を水中に溶かす可溶化剤PTSを用いて、酸化的Heck反応を行ったところ、通常必要な高温条件と酸の添加が不要であったという報告である。
本反応は残念なことに適応基質がかなり限定的であり、ダイレクティンググループとしてアセトアミドなどのアミド基を用いており、さらにアミドのメタ位にアルコキシ基が必須のようだ。そのため基質としては芳香環にさらにメチル基を有する基質以外は、アクリル酸誘導体のエステル部位を変えた物やアミド部位を変えたものが中心となってしまっており、基質の多様性に乏しいのは否めない。それでも上図を見てわかるように大きめの分子にも適用してみようという心意気は伝わってくる。
このように芳香環の電子供与能が重要になってくるのは、触媒に用いているパラジウム種が通常用いられている酢酸パラジウムではなく、カチオン性パラジウム錯体であることから、アルコキシ基による電子供与が炭素ーパラジウム結合形成に重要な役割をもっているからだろう。
おもしろいのは酢酸パラジウムを用いていないことから、パラジウムが炭素上に載る際に通常描かれる酢酸イオンによる水素引き抜きのメカニズムとは違う反応機構で進行していると考えられる点だ。論文には具体的な記述は見当たらないが、このあたりを詰めていくと他の反応の設計に役立ちそうな気がする。著者らはPTSの応用例を探しているだけで、そんなことには興味ないかもしれないけど。。
参考)
アルドリッチ:PTSの紹介
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