2010/04/12

Cascade Cyclization To Produce a Series of Fused, Aromatic Molecules

William J. Behof, Dongchuan Wang, Weijun Niu and Christopher B. Gorman*
DOI: 10.1021/ol100656d

多縮環芳香族は電子材料を始めとして有用な有機化合物としてしられる。窒素含有の多縮環化合物はさらに、複数点で水素結合受容部位としても働き構造的にも興味深い化合物といえる。
本報告はこのような窒素含有分子を近接するニトリル基への求核攻撃を開始としてドミノ反応で構築するという報告だ。アイデアはシンプルだが、変わった構造の分子を高収率で取得することに成功している。



得た化合物の吸収波長スペクトルを取った所、予想通り縮環が多くなるほどレッドシフトを起こすことがわかった。また各分子の量子収率を測った所、分子右下のフェニル基が安定性に寄与しており、量子収率に影響を及ぼすことも明らかとなった。
ところでこういった分子種でもっとも興味深いのはその構造である。下図に示すように含窒素2環性化合物は2点で、3環性のものは4点で分子間水素結合をすることで二量体を結晶中では基本構造としている。この平面図ではわからないが、3次元的には2環性の方は垂直に近い形で重なりあっており、逆に3環性の方はほぼ平行である。さらにこの2量体を基本単位として積み重なり構造を取っているが、いずれの場合も階段状にスリップするようにスタックを組んでいる。知らなかったが特に後者のようなスリップした2Dスタッキングは置換5環性化合物には特徴的なものらしい。



本論文では合成した分子の構造を軽く調べたにすぎないが、詳しく物性を調べてみたり、もっと大きな分子の合成に適応したらどうなるだろうかと妄想の広がる報告だ。例えば、もう少し長くすることでカリックスアレンのような環状構造形成を1段階でできないか。またはイオンなどを両側から挟む形で水素結合を形成する錯体が作れれば、抗体抗原反応のような特異性を持った検出機構に応用できないだろうかなど、机上の空論は色々描けそうだ。

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