Heng-Yen Wang, Daniel S. Mueller, Rachna M. Sachwani, Hannah N. Londino and Laura L. Anderson*
DOI: 10.1021/ol100659q
有機材料や医薬品の母骨格として有用な置換ピロールの合成法として教科書によく取りあげられる反応には、1,4ージカルボニル化合物とアミンとの縮合、Paal-Knorr反応がある。しかし原料の1,4-カルボニル化合物の調製は、逆合成しにくい場合も多々あり厄介となることがある。
その点、O-ビニルオキシムを原料とする[3,3]-シグマトロピー転位を介する1,4-イミノカルボニル化合物の生成と、連続する環化によりピロール環を構築するTrofimovらが報告した手法は1,4-ジカルボニル化合物を合成する必要がない点が勝っているといえるが、Trofimovらの方法はO-ビニルオキシムを合成する際に、強塩基存在下でアセチレンを用いており、官能基受容性と生成物の位置選択性に問題を抱えていた。
本報告では、O-アリルオキシムの異性化というアプローチを取ることで、より温和かつ位置選択的にO-ビニルオキシムを合成することを達成しており、同時に2,3,4位選択的に3置換ピロール合成に成功している。
O-アリルオキシムの異性化が鍵となるが、通常アリルエーテルの異性化に用いられるロジウムやイリジウム錯体では望みの反応が起こらず、[(cod)IrCl]2/2NaBH4/2AgOTfという条件から生じるカチオン性イリジウム錯体が有効であり、種々のO-アリルオキシムからTHF中、室温にて中程度から良好な収率でcis/transの混じりとしてビニルオキシムを得ている。調製したオキシムはジオキサン溶媒でモレキュラーシーブを添加して加熱することでシグマトロピー転位と続く環化が起き、中程度の収率で目的物の置換ピロールを得ている。この際、両α位からエナミンが生じうる場合には、立体的にすいている方、電子的に安定化する方から反応が進行している。ここでは段階的に反応を進行させているが、ワンポットで進行させることも可能で、その際はTHF溶媒で脱水剤なしで加熱することで目的物を中程度の収率で得ている。
本反応はオレフィンの異性化に着目することで、温和な条件でO-ビニルオキシムを得ることに成功しているものの、全体的に収率が低いのが気になる点だ。特に環化段階の収率が低く、この部分の改善が必要だろう。基質としては原料の合成が難しくなるかもしれないが、アリルではメチル置換のピロールしか合成できないので、もう少し複雑な置換基の導入に挑戦するというのも次の展開として考えられる。
シグマトロピー転位は、多くの場合立体選択的にきれいに決まることが多いので、日頃の合成戦略にも上手に組み込めるようになりたいものだ。
2010/04/27
Carbon−Carbon Bond Formation and Pyrrole Synthesis via the [3,3] Sigmatropic Rearrangement of O-Vinyl Oxime Ethers
ラベル:
Heteroaromatic,
OL,
SigmatropicRearr
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