Masamichi Shirakura, Dr., Michinori Suginome, Prof. Dr. *
10.1002/anie.201001188
プロパルギル位に不斉点を有する化合物の合成手法としては末端アルキンのカルボニル化合物への付加がもっとも研究が進んでおり、ブチルリチウムなど両論量の強塩基を用いずに触媒量の塩基で反応が進行するような触媒的不斉合成を含めていくつかの例が報告されている。一方で、遷移金属を用いた末端アルキンのオレフィンへの付加、すなわちハイドロアルキニル化反応はアルキンの二量化反応が進行しやすく現在でも課題の残る研究分野だ。
本報告は嵩高いアルキンを用い、さらに定速添加させることでニ量化の抑制を図りつつ、キラルニッケル触媒の存在下、1、3−ジエンへのヒドロアルキニル化を達成している。
配位子としてはタドール由来の配位子を用いると不斉収率は最もよかったが、80時間以上かけてアルキンを添加してもニ量化を完全に制御することはできず収率はどの基質も中程度にとどまっている。本反応はアルキンは嵩高いものを用いることが必要であるため、基質で振れるところはジエンの芳香環置換基のみであるが、電子吸引基、供与基ともに同程度の収率で目的物を得ている。またトランスジエンを用いると収率が低下することから、ジエンがニッケルに配位して反応が進行していることが推察される。
アルキンの置換基がジメチルの場合にはアセチレンのアセトンへの付加体であり、これは塩基性条件にて逆反応を起こすことが可能で、アルキンの保護基、またはアセチレンガスの等価体として用いられる。本反応の場合はメチルではなくイソプロピル基であるが、ロジウム触媒を用いることで系中でのロジウムアセチリドの生成と共存させたメチルビニルケトンへのマイケル付加を行わせることで、生成物のアルキン部位の有用性を示すことに成功している。
当然相当な検討がなされているのだと思われるが、収率の低さと80時間以上もの反応時間がやはり気になる点だ。一方でアルキン部位の変換に成功していることでやや特殊なアルキンを用いている点を補っている点は評価できる。
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