Da-Gang Yu, Bi-Jie Li, Shu-Fang Zheng, Bing-Tao Guan, Bi-Qing Wang, Prof., Zhang-Jie Shi, Prof. Dr.*
10.1002/anie.200907359
クロスカップリング反応は非常に有用な反応であり、その適応基質は反応性の高いAr-I,BrからCl,Fなどへと徐々に適応範囲が広がってきた。またフェノール誘導体としてはOTfがもっとも頻用されているが、最近ではエステルやアニソールなども使用可能となっている。またC-H活性化反応によることで、ハロゲン化などの事前の基質活性化を必要としない例も多くなってきた。しかし、前者のハロゲン化合物では基質の合成に多段階を有すること、後者のC-H活性化では高温を必要としたり触媒量が多めになってしまうこと、また多くの場合隣接基が必要であるなどの課題があった。
筆者らはフェノールを直接クロスカップリングの基質とすることができれば、ステップエコノミー、アトムエコノミーの観点から有用だろうと考え研究に着手したようだ。結合開裂エネルギーを考えるとフェノールのC-Oを開裂させるのは難しそうなので、フェノキサイドイオンとすることでC-O結合を弱めてやる方針で種々検討を行った。
ニッケル触媒とフェニルグリニャール試薬存在下、カウンターカチオンとしてリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムと検討したところ、マグネシウムがもっとも良い結果を与えた。またグリニャール試薬中のハロゲンイオンも検討した所臭化物イオンが最も良い結果を与えることがわかった。実際、メチルグリニャール試薬から調製したナフトキサイドイオンはX線結晶構造解析から二量体構造を示しており、ナフトール酸素原子が2分子のマグネシウムに配位することで、他のカウンターカチオンよりもよりC-O結合距離を伸ばして切断しやすくしている可能性が示唆される。本反応が現状ではフェノール誘導体には適応できないことも、微妙な電子状態の差が反応の成否を決めていることが伺える。
ナフトール誘導体とグリニャール試薬の一般性では立体的な要素は収率にはあまり影響を与えず、シリルオキシ、ジメチルアミノ基、ピロールなど多様な構造に対して許容性があるようだ。
結局のところ当量のグリニャール試薬を用いるため、総プロセスとしてアトムエコノミーに優れているかどうかは不明だが、ステップ数は短くすむため、既存の方法論との優位性は強調できるだろう。今後は反応機構研究を通じて、なんとかフェノール誘導体にまで適応範囲を広げたい所だ。
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