Stephen N. Greszler, Justin T. Malinowski, and Jeffrey S. Johnson*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja108848d
エノラートのエステルによるαーアシル化反応、Claisen縮合では生成物の活性メチレン部位の脱プロトン化が容易に進行するため、α位に不斉点を導入することが難しい。また逆反応の容易さからα,α-二置換エノラートを用いた4置換炭素構築の試みは困難であるとされている。本報告ではアシル化剤としてβ-ラクトンやラクタムを用いることで、4員環の歪みを利用して逆反応を抑える工夫がなされている。
著者らは既にReformatsky試薬のシリルグリオキシレートへの付加から生じた中間体がBrook転位により亜鉛エノラートへと変換されること、および生じた亜鉛エノラートがケトンと反応することでγ-ラクトンが得られることを報告している。その知見を基にケトンの代わりにβ-ラクタムを用いれば、環の歪みから逆反応が起こらずにアシル化反応が進行すると考えた。実際に検討を行った所、Reformatsky試薬、シリルグリオキシレート、ラクトンの3成分を混ぜることで所望のα位が4置換のエステルが高いジアステレオ選択性で得られた。以前の反応では過剰量のReformatsky試薬がケトンと反応してしまうために、Brook転位による亜鉛エノラートの生成後に段階的なケトンの添加が必要であったが、今回の系ではラクトンの反応性の低さから3成分を混合しても副反応は観測されなかった。β位に不斉点を有するβ-ラクトンは比較的容易に入手可能なことから、高いジアステレオ選択性が得られていることは魅力的だろう。
その他の基質に対しても反応を行ったところ、総じて高いジアステレオ選択性で目的物が得られている。第一段階のシリルグリオキシレートへの付加の変換効率にもよるが、収率が中程度の基質が多いのが気になる点といえる。なおβ-ラクトンの代わりにβ-ラクタムも適応可能であるが、ジアステレオ選択性は出ていない。この選択性発現機構に関しては環状遷移状態の図で著者らは説明しているが、少しわかりにくいように感じられた。生成物のアシル化部位は条件により二つのジアステレオマーへと選択的な還元が可能で、また二つのエステル部位も立体的環境がかなり異なることもあり、一般的な条件で差別化が達成可能となっている。
α,α-二置換エノラートを用いる際にはエノラートの幾何異性の制御が一つのポイントになるが、本反応では亜鉛とのキレートおよび立体的な要因により(E)-エノラートが選択的に生成しているようだ。一番安価で入手容易なブロモ酢酸エチルが2.3当量という点はまだ実用的で、ワンポットで多官能基化された化合物が得られる魅力的反応といえるだろう。
2010/11/23
Remote Stereoinduction in the Acylation of Fully Substituted Enolates
ラベル:
JACS,
MCRxn,
StereoselectiveRxn
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