2010/11/08

A Selective and Convenient Method for the Synthesis of 2-Phenylaminothiazolines

April L. Bernacki*, Lingyang Zhu, and D. David Hennings
Org. Lett., DOI: 10.1021/ol102428m

チアゾリンは生理活性物質によく見られる部分構造であるだけでなく、不斉配位子として頻繁に使われるオキサゾリンの硫黄類縁体であることから、未だ見出されていない用途も考えられる構造だ。2-アミノチアゾリンの合成法としては2-ヒドロキシエチルチオウレアのヒドロキシル基を何らかの脱離基とし、チオウレアから分子内環化を経るのが一般的だろう。しかし硫黄からの環化による目的物の他に、窒素からの環化に由来するイミダゾリンチオンや硫黄原子が脱離基となって形成されるオキサゾリンなど副生成物が問題となることもある。本報告では、CDIを用いてアシルイミダゾールを脱離基とするチアゾリン合成法であり、上述の副生成物生成を最小限に抑えている。

著者らはチオ-CDIを用いて非対称チオウレアを合成しようとした際に、少量ながらチアゾリンが生成することに気がついた。チオ-CDIがチオウレアからチアゾリンへの変換を促進していることを見出したので、その他の活性化剤を検討した所CDIを用いるとさらに効率的にチアゾリンへの変換がおこることを見出した。その他の試薬、例えばDEADでは既報の通り、窒素からの環化と競合しチアゾリンは20%収率にとどまっている。


バリン以外の他のアミノ酸由来の側鎖では、アラニン、フェニルグリシン由来の基質など良好な収率でチアゾリン誘導体を得ている。一方でヒドロキシル基を2級アルコールとた場合には置換基効果が大きく、単純なアルキル基ではチアゾリンは全く得られず、アリール基置換では窒素からカルボニルイミダゾールへの巻き込みも見られるものの目的物優位に反応が進行した。これはチアゾリン合成における反応点がベンジル位にあたり、置換基による活性化を受けていると考えられる。

本論文を読んで興味を持つのが、チオアミドを基質とした場合には反応が進行するのか否かという点と、もし進行するなら2位に不斉点を有する基質を用いた際のラセミ化の有無だろう。というのもペプチド類縁体としてチアゾリンやオキサゾリンを用いた場合にはしばしば2位のラセミ化が問題となり、光延条件やスルホニルクロライドによる環化ではうまくいかないことがある。Burgess試薬による環化ではラセミ化が少ないと報告されているが、試薬の値段等を考えると、もしCDIで代替できるなら有用な合成法になりうると感じる。

参考)
CDI (Aldrich): 100g, ¥22,200
Burgess reagent: 1g, ¥12,500
Burgess reagent(synlett spotlight): 2000, 559.; 2009, 328.

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