Bill Morandi, Dr. Brian Mariampillai, Prof. Dr. Erick M. Carreira
Angew. Chemie. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201004269
生理活性物質における含フッ素化合物の重要性は改めて述べるまでもない。しかし電気陰性度の高さに起因する含フッ素化合物の特殊な反応性のために新たに条件検討が必要なことも多く、フッ素含有ビルディングブロックの効率的合成法の需要は大きい。本報告はトリフルオロメチル基の置換したキラルシクロプロパン環合成に関するものだ。
著者らは既にFe-ポルフィリン錯体を用いたトリフルオロメチルシクロプロパンの合成を報告している。しかし水中での反応が難しかったため、まずは水中でジアゾアルカンを調製し、それを反応系へ投入する必要があった。ジアゾアルカンの危険性を鑑みると、水中にてジアゾアルカンの調製からシクロプロパン化までがワンポットで行われることが望ましい。そこで条件検討を行った所、コバルト(II)-サレン錯体が良好な不斉収率を与えることがわかったため、配位子、反応温度、添加剤などの検討を行った。Ph3Asを添加剤とし、反応温度を-15度とすることで収率、不斉収率ともに最適化された。なお-15度の反応温度のために溶媒を水から塩化ナトリウム水溶液へと変更している。またジアゾアルカン生成のためのNaNO2は水溶液による定速添加よりもワンポーションによる添加の方がよい結果を与えている点も反応操作の観点から好ましい。
各種スチレン誘導体を用いて反応を行ったところ、電子供与基を有する基質は収率、不斉収率ともによく、電子吸引基を有する基質では多少収率が落ちる傾向にある。いずれの基質も非常に高いトランス選択性で目的物を得ている。また1,1-二置換オレフィンに対しても反応はスムーズに進行し、高い不斉収率で目的物が得られている。
一見して配位子の検討をはじめ相当の苦労をしたと思われる。反応条件として色々な試薬を用いるが、次々と加えていくだけなので反応操作としてはそこまでの煩雑さはないだろう。本文中にも記載がある通り、Jacobsenや香月先生の報告ではサレン上の置換基は電子供与基がよい結果を与えることが多いのに対し、本系ではジクロロ置換のものが最適である点、香月先生のシクロプロパン化ではコバルト(III)がよく、本系ではコバルト(II)が良い点など不思議な点が多い系である。
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