Prem P. Thottumkara and Thottumkara K. Vinod*
Org. Lett., DOI:10.1021/ol1023807
オレフィンを酸化的に開裂しアルコール、アルデヒド、カルボン酸などに導く変換は、例えばオレフィンをアルデヒドの保護基として全合成の一部に用いられるなど頻用される変換の一つである。通常これらの変換にはオゾン分解やオスミウムによるジオール化と続く酸化的開裂によることが多いが、オゾンの爆発性やオスミウムの毒性などの問題から代替手法が望まれている。本反応はオキソンを共酸化剤とした超原子価ヨウ素によるものだ。
上述したように本形式の反応は多くの代替法の開発が進められており、その中にPhIOを用いたものがある。著者らはオキソン存在下での水溶性超原子価ヨウ素の研究を行っており、4-ヨウ化安息香酸とオキソンとの反応により生じる超原子価ヨウ素種が、代替法として報告されている活性種と類似の構造になるのではないかという着想から本研究は開始した。まずはオキソンと4-ヨウ化安息香酸をD2O/CD3CN(3/1)中で反応させたところ、原料が完全に消失することを確認した。そこで1-フェニル-1-シクロヘキセンを基質として反応の検討を開始した。オキソンのみではジオールで反応は停止するものの、4-ヨウ化安息香酸を加えることで酸化的開裂が進行した。アルデヒド段階で反応を制御することが難しかったため、オキソンの当量を増やし、収率よく開裂体を得ることができた。さらに収率を損なうことなく4-ヨウ化安息香酸の当量を5mol%にまで減じることができた。
様々なオレフィンに対して反応を試みたところ、フェニル基と共役した基質では速やかに反応が進行するものの、非共役のオレフィンでは反応が遅いことが明らかとなった。このような基質ではヨウ化物を量論量用いることで反応時間を短縮することが可能である。いくつかの対照実験により、cis-ジオールの方が反応が速やかであること、環状基質のほうが反応が速いこと、オレフィンと対応するジオールではほとんど反応速度に差がないこと、などが明らかとなった。これらの事実より、オキソンによるジオール化は速やかに進行し、その後の開裂が律速であること、開裂段階ではベンジル位によるカチオン安定化作用が反応速度に重要な役割を果たしていることがわかる。
著者らはわざわざ4-ヨウ化安息香酸を触媒として用いているにも関わらず、生成物のカルボン酸との分離が困難な基質があるという多少残念な面もあるものの、多数の対照実験を始めとして丁寧な構成の論文であるという印象を受けた。
2010/11/18
Oxidative Cleavage of Alkenes Using an In Situ Generated Iodonium Ion with Oxone
ラベル:
HypervalentIodine,
OL,
Oxidation
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