Jun Chen, Junmin Chen, Feng Lang, Xiangyang Zhang, Linfeng Cun, Jin Zhu, Jingen Deng and Jian Liao
DOI: 10.1021/ja1005477
触媒的不斉合成では、
1)現存する触媒系では達成できない反応を進行させる
2)現存する触媒よりも低触媒量、高反応性/高選択性を達成する
といった目的で新規配位子の合成を目指すことが多い。
BINOLやBINAPに代表されるビナフチル型の配位子や、PyBOX、BOXなどオキサゾリン型の配位子、サレン型の配位子などはPrivileged Catalystと呼ばれ多くの触媒的不斉合成に用いられてきた。近年ではこういった配位子では成し遂げられない不斉空間を構築しそうな配位子として、金属に直接配位する原子に不斉中心を持たせたタイプが一つの候補として注目されており、リン原子や硫黄原子の利用があげられる。本論文も硫黄原子にキラリティーを持たせたタイプの配位子を用いている。
ロジウム触媒を用いたsp2-炭素求核剤のエノンへの1,4-付加は京大の林先生らの先駆的な研究が有名である。本触媒ではRh-BINAP系では十分な反応性を得られないchromenoneへの付加を、ホウ酸エステルを用いた場合には既存の触媒と同程度の低化学収率/高不斉収率ながら、テトラアリールボレートナトリウムを用いた場合には中程度の収率/高い不斉誘起に成功している。
触媒の構造はX線を取得しており、ロジウムダイマーを挟む形で2:2錯体を形成しているようだ。
tert-ブチルスルフィニル部位といえば、Ellmanのキラルスルフィニルイミンを用いたアミン合成が有名であり、リガンドの不斉部位へと導入するのも自然な流れともいえるだろう。それでもこういったシンプルなリガンドすら今まで合成されてきていなかったのだから、キラリティーを有する硫黄原子はまだまだ可能性があるように思える。併せて合成自体の難易度が高い、キラリティーを有するリン系配位子も今後種類が出てくるだろうと考えられる。あとは配位子ではないが、ケイ素周りに不斉を有するルイス酸あたりがおもしろいかもしれないと個人的には思っている。
参考)
Ellman Group
2010/03/22
A C2-Symmetric Chiral Bis-Sulfoxide Ligand in a Rhodium-Catalyzed Reaction
ラベル:
AsymmetricSynthesis,
JACS,
MichaelRxn
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