2011/02/19

Rhodium-Catalyzed Enantioselective Addition of Boronic Acids to N-Benzylnicotinate Salts

Christian Nadeau*, Sara Aly, and Kevin Belyk
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja111540g

ピリジニウムイオンへの求核剤の付加は置換ピペリジン合成の有用な方法論である。しかしその触媒的不斉反応は、イソキノリンやキノリンへの付加は多様な求核種が用いられるものの、ピリジニウムイオンへの付加に関してはアルキン、シアニド、ジアルキル亜鉛の付加に限られるのが現状だ。本報告ではキラルロジウム触媒を用いたアリールボロン酸の付加に関するものだ。

臭化ベンジルでピリジニウムイオンとしたニコチン酸エステルに対してロジウム源、配位子、溶媒に関して検討を行った。反応温度は60度にて基質の分解がないことを確認している。120種を超える配位子のスクリーニングから、軸不斉二座配位型リン配位子が良い結果を与えることを見いだした。また塩基の存在は反応の進行に必須であり、溶解性の面からか水を混合溶媒とすることが再現性を得るために重要であった。


さまざまなボロン酸を用いて付加反応を検討した。反応の位置選択性は、全ての反応で、6位:4位が>20:1であった。総じて良好な不斉収率を与えているが、2-MeC6H4-のようなオルト位に置換基を有するものでは少し不斉収率が減少し、電子吸引基を有するものでは収率が減少する傾向が見られる。特にニトロ基置換のものでは収率は23%にまで落ち込んでいる。収率は中程度ながら、本条件はアルケニルボロン酸にも適応可能である。さらに6-メチルニコチン酸エステルを原料とした場合も、6位選択的に付加が起こり、4級炭素構築が可能だ。初期的な結果ではあるものの、BINAPを不斉配位子として中程度の収率、不斉収率で付加体を得ることに成功している。

最初に述べたようにジヒドロピリジンを還元することで多置換ピペリジンとすることができる。本論文でも3,6-cis-ピペリジンを塩化を含めて5段階にて調製している。残念なことに原料が99%eeであるのに対し、得られた多置換ピペリジンは80%eeとなっている。これはPd(OH)2を用いた水素添加条件で、一部オレフィンの異性化が進行してしまっているためだろうと論文中で述べられている。

初期的な検討ながら4級炭素構築反応を試みているところは好感が持てる。当然相当の検討があったと思われるが、高い不斉収率で得られた付加体のeeが進行してしまうのは残念で、さらなる検討が望まれる。また論文中に記載があったキラル配位子のスクリーニングなどはMerckのプロセス研究所ではどの程度自動化されていて、どれ位の時間で終えられるものなのかは興味のある所だ。

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