Jinho Kim and Sukbok Chang*
10.1021/ja104917t
ニトリル基は種々の官能基に変換可能であり合成化学的に有用性が高い。ベンゾニトリル誘導体の合成では、アニリン窒素などを起点としたSandmeyer反応やハロゲンを足がかりとする芳香族求核置換反応やカップリング反応、最近ではC-H活性化を経るカップリング反応などによりニトリル基を導入するのが通例だ。この際のニトリル基は金属シアニドやアセトンシアノヒドリンに由来するものがほとんどだ。本報告は、ベンゾニトリル誘導体の合成に際し、ニトリル源をDMFとアンモニアから生成させるというものだ。
本研究の発端は、2−ピリジルアレンを基質としてアンモニアを窒素源とした芳香族アミノ化反応を検討していた際にDMF溶媒中で反応を行っていた所、望みのアニリン誘導体ではなくベンゾニトリル誘導体が得られてきたことから始まった。反応条件としては酸素雰囲気下、DMFを溶媒として触媒量の酢酸パラジウム、量論量の臭化銅(II)を用いる条件が最適と判明した。さらに条件を検討した所以下の事実が明らかとなった。すなわち、1)銅塩は量論量必要、2)酸素が必要、3)ニトリルの窒素はアンモニアに由来、4)ニトリルの炭素はDMFのN-メチル基に由来、という事実が明らかとなり、これにより詳細は不明なものの反応機構としては銅と酸素による一電子酸化を経ることが示唆された。またパラジウムの挿入段階で速度論的同位体効果が観測されている。
本条件の一般性としては配向基はピリジンまたはピリミジンと6員環窒素に限定されており、さらに芳香環上の置換基に電子吸引基が入ると収率が下がることから、一般性はさほど高くない。注目すべきは、ラベル化されたアンモニアとDMFを用いることでニトリルの炭素、窒素ともにラベル化された生成物を合成することに成功している点だろう。彼らによればこのようなニトリル合成の初の例ということだ。
詳細なメカニズムが不明であり、系中で生じるシアニドがCuCNなのかHCNなのかもよくわからないが、いずれにせよ同位体効果が見られていることからシアニド発生までは早いと考えられる。通常NaCNなどのシアニド含有化合物は法的にも安全性の面からも取り扱いが厄介であるので、本反応のような手法が芳香族シアノ化以外でも利用可能なら便利かもしれない。
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