2010/07/17

Stereoselective Synthesis of Tertiary Ethers through Geometric Control of Highly Substituted Oxocarbenium Ions

Lei Liu, Paul E. Floreancig, Prof. Dr. *
10.1002/anie.201002281

炭素と水素の大きさを区別するのは容易だが、炭素鎖と炭素鎖の大きさを区別するのは難しい。これがアルデヒドへの付加と比べてケトンへの付加において立体選択性を出すのが難しい要因だ。同様にオキソカルベニウムイオン中間体も1,1-二置換体となると幾何異性の制御が難しくなり、結果として得られるエーテルの選択性低下につながる。本報告ではこのような1,1-二置換オキソカルベニウムイオンの幾何配向について調べ、分子内環化反応により立体選択的な3級エーテル合成へと応用している。

研究の発端は著者らの実験において、通常はE-体のオキソカルベニウムイオンを取るはずのモノ置換体が、置換基がアルキニル基の場合には、約1:1の割合に由来する生成物を得たことに起因する。このことから二置換のイオン中間においてもアルキニル基を有する基質ならば幾何異性の制御が可能なのではないかと考えたようだ。



DDQにより生成させたカルベニウムイオン中間体を分子内で6員環遷移状態を経て補足するような基質をデザインして、実際の検討を行った。メチル基と比べると、アルキニル基はより小さい置換基にあたり、アルケニル基やアリール基はより大きい置換基にあたることがわかった。またオキソニウム根本の立体配置は生成物の立体配置に無関係であることが、想定通りの中間体としてオキソカルベニウムイオンが生成していることを示唆している。他に著者らは、モノ置換オキソニウムに対する求核側のリンカーの立体配置との関係も検討している。さらに条件は多少異なり、収率も不満が残るが、分子間反応への可能性についても初期的な知見を得ている。

本報告の結果は、著者らの全合成研究の結果から得たものだと思われ、彼らの興味はこれを複雑な分子の合成へと応用することにあるようだ。しかし反応開発という側面から見ると、この中間体を酸化条件に耐える炭素求核種などで分子間で補足できれば魅力的な反応になりそうに思える。また山本尚先生の嵩高いアルミニウム錯体によるアセタールの選択的開環など、オキソニウムの試薬による制御はよく研究されているので、本報告で見られたような選択性が逆転するような酸化剤や反応条件を見いだせたらおもしろい。

0 件のコメント:

コメントを投稿