Christian Spiteri, Steve Keeling and John E. Moses
DOI: 10.1021/ol101150t
1H-インダゾールはインドールからの派生骨格として幅広い応用範囲可能性を有しており、例えば創薬化学においては母骨格として使われることもある。合成法としてはo-Me置換アニリンやヒドラジンからの分子内環化反応、ハロアリールを基質としたPdやCuのクロスカップリングを起点とする反応などが一般的だ。一方でベンザインと1,3-双極子の[3+2]環化反応も直接的にインダゾール骨格を与える手法と考えられ、実際にジアゾ酢酸エステルとの反応が報告されている。本報告も、同様にニトリルイミンを1,3-双極子として用いたインダゾール合成方法に関するものだ。
先のジアゾ酢酸エステルを用いる方法論は、温和な条件で生成物を得ることが可能であるが、生成物の置換様式としては1位窒素無置換-3位エステル基置換型のものしか得られない。ニトリルイミンを用いれば異なった置換様式のものも合成可能であるということが本方法論のウリの一つとなる。この反応を考えるにあたって注意する点は、ベンザイン、ニトリルイミンともに反応性が高いために、お互いを適切な濃度で生成させないと各々のダイマー体などが生成するだけに終わる可能性があることだろう。実際にTBAFをベンザイン発生におけるフッ素源、かつニトリルイミン生成のための塩基として用いた所、望みの成績体も得られてきたがニトリルイミンの二量体も得られてきた。種々検討の結果、CsFと18-クラウンエーテルの組み合わせにより、二量体の生成を抑え、短時間で反応が進行することを見いだした。カリウムよりもイオン半径の大きいセシウムを用いた場合でも、クラウンエーテルの効果が如実に現れている点は注目だろう。
基質適応範囲は広いとは言いがたく、インダゾール3位置換基にあたる部位に電子吸引基を有する芳香環がある場合では収率が落ちる傾向にある。その中でもイソオキサゾールやチオフェンなどの複素環でも中程度の収率で生成物を得ている点は評価できる。全体的に基質によって収率がばらつくのは、先にも述べたように5分という短時間で反応が完結してしまう試薬の反応性の高さに由来するのだろう。
「室温5分」という点を著者らはポイントの一つとしているように見受けられるが、スケールアップを考えた際には「室温」も「5分」も好ましい点ではない。内温測定をすればどの程度の発熱があるかはわかるだろうが、本反応でもかなり発熱しているのではないだろうか。収率改善のためには、ベンザイン生成の限界温度とニトリルイミン生成の限界温度を調べた上で、もう少し低温で温度制御することが重要だと思われる。その際に特にニトリルイミンの場合は、置換基次第で条件を変えることになることも考えられる。
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