Thomas J. Maimone and Stephen L. Buchwald*
DOI: 10.1021/ja1044874
各種中間体として有用なO-アリールヒドロキシルアミンは、ヒドロキシルアミンを用いたSnAr反応や銅触媒を用いたヨウ化アリールとオキシムとのカップリング反応などで合成されるが、現在最も汎用性のある方法論は銅塩を用いたホウ酸アリールとN-ヒドロキシフタルイミドとのカップリング反応だ。本報告は、パラジウム触媒を用いた方法論に関するものだ。
ヒドロキシルアミン源としては市販の酢酸エチルオキシム体を用いて、臭化アリールを基質として、各種検討を行った所、著者らの開発したビアリール型配位子を用いた際に反応が素早く進行することを見いだした。本反応では、1)生成物のN-O結合の熱安定性、および2)高温によるN-O結合へのパラジウムの挿入、が危惧されるため、比較的低温での反応が望ましい。そのため配位子による触媒の反応性向上がポイントのようだ。
基質一般性も広く、ヨウ化アリール、臭化アリールはもとより塩化アリールでも反応は進行するが、電子豊富な塩化アリールに関しては現状では厳しいようだ。また各種複素環のうち、活性N-H結合を有する基質への適用も現在の所難しいとのこと。それでも一般的な反応よりも広い基質適応範囲を持っていることは間違いない。
生成物は塩酸を用いて容易にO-アリールヒドロキシルアミンへと変換が可能であり、系中にαプロトンを有するケトンを共存させておくことでベンゾフラン誘導体へと変換が可能となっている。最終的にはこの変換も短時間で良好な収率を与える条件を見いだしているが、論文中には相当の検討を重ねたことを示唆する記述がある。
全体を通して、収率、反応時間など細かい部分まで完成度が高く、さすがBuchwaldと感じさせる論文であった。
2010/07/07
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