Oleg Vechorkin, Nathalie Hirt and Xile Hu*
Org. Lett., Article ASAP
DOI: 10.1021/ol101450u
以前にAu-NHC錯体によってオキサゾールなどの複素環をCO2を用いてカルボン酸とするという反応を紹介した。本報告では基質はベンゾチアゾールなどのより酸性度の高いものに限られるけれども、炭酸セシウムという塩基のみを用いてCO2との反応によりカルボン酸を得るという反応に関するものだ。
著者らはベンゾチアゾールのC2プロトンのpKaは27(DMSO)なので、LiOtBuなどの塩基で脱プロトン化が可能(tBuOH, pKa=29.4, DMSO)と考え検討を開始した。実際にCO2雰囲気下、DMF中にて反応を行わせることで、LiOtBuだけでなく炭酸セシウムを塩基とした場合にもベンゾチアゾールのカルボキシル化が定量的に進行した。著者らはより温和な条件を好み、その後の検討では炭酸セシウムを用いることとした。また反応条件は125度という高温条件であり、生成物の脱炭酸などの分解反応も5時間で20%ほど進行するとのことで、今後の検討では系中でメチルエステルに変換している。
基質としては冒頭で述べたように複素環の酸性度が肝であり、電子吸引基置換のものが多いのが気になる点だが、置換ベンゾチアゾール/ベンゾオキサゾールに関しては良好な収率で得ている。その他の複素環としては、5-アリールオキサゾールや2-アリールオキサジアゾールも適用可能なようだ。後者の場合、アリール基はメトキシのような電子供与基置換でも良好な収率で反応は進行する。またチアジアゾールを基質とした場合には開環反応が進行してしまうとのこと。
基質一般性などで見劣りするのは否めないが、それは塩基性によるものが大きい。例えばAu-NHC錯体の系で基質としていたチアゾールのpKaは29.4(DMSO)であり、やはり活性化なしに炭酸塩で脱プロトン化するのは厳しいということになるだろう。この反応もLiOtBuを塩基としてもう一度基質一般性を検討すれば、もう少し広い範囲で反応が進行するかもしれないと感じた。
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