2010/07/24

Facile, Efficient, and Catalyst-Free Electrophilic Aminoalkoxylation of Olefins

Ling Zhou, Chong Kiat Tan, Jing Zhou and Ying-Yeung Yeung*
10.1021/ja104168q

複数の結合を一挙に構築するカスケード(タンデム)型の反応は、単工程で複雑な分子群を得るにあたり魅力的だ。また多成分がワンポットで次々と反応し、生成物を与える反応では単純な原料を用いて複雑な分子を一挙に得られうるが、考えられる多数の反応経路から望みの反応を起こさせるには、反応系の適切な設計と反応条件の検討が必要なことが多い。本論文ではオレフィン、環状エーテル、スルホンアミド、臭素化剤を用いてアルコキシアミドを得る反応を報告している。

著者らはオレフィンと臭素化剤から生じたブロモニウムイオンが環状エーテルにより補足可能だと考え、この際に生じた反応性の高いオキソニウムカチオンを系中に存在する求核種が攻撃することにより多成分型反応が実現可能という着想を得た。NBSを臭素化剤、THFを環状エーテル、求核種として窒素求核剤を用いて検討を開始した所、アルキルアミンやアニリンといった比較的求核性の高い試薬では目的物はほとんど得られなかった。ベンゼンスルホンアミドを用いた場合には収率は78%にまで上昇し、芳香環状の置換基の電子効果を調製し4-Ns-スルホンアミドとすることで最適条件を得た。本文に記載はないものの、低い求核性を有する窒素求核種の方が高い収率で成績体を与えているのは、ブロモニウムイオンへの反応が環状エーテルと窒素求核種との間で競争的だからだろう。また結果論ではあるが、Ns基を用いることで光延反応によるさらなる反応や、チオールを用いた除去など既存の化学が使用可能となるのは大きい。



オレフィンの一般性としては環状オレフィンばかりでなく鎖状型のオレフィン、内部/末端に限らず幅広く用いることが可能のようだ。多置換オレフィンとの反応では、トランス体のMarkovnikov型の生成物が得られている。環状エーテルも5員環に限らずエチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロピランといった他のサイズや、ジオキサンのようなものも用いることが可能となっている。生成物は分子内にさらなる変換の足がかりとなるアルキル臭素原子を有しており、著者らは一つの可能性としてNs基を起点とした閉環反応によりモルホリン合成を行っている。また論文の最後では窒素以外の求核種として酢酸や安息香酸などのカルボン酸を酸素求核種として用いた初期検討の結果を示しており、収率はまだまだ低いもののさらなる可能性を感じさせるデータだ。

実は本論文のToCを最初に見た時は、環状エーテルが3員環エポキシドであったこともあり、アミンがエポキシドへ求核攻撃し、立ち上がったアルコキシドがブロモニウムイオンへと反応する形式の報告だと思った。環状ポリエーテルの生合成カスケードのような反応を分子間で行っているのだと思ったのだ。上述したように、この環状エーテルは色々な大きさの環が使用可能である。どの程度のサイズまで使用可能かは酸素原子の不対電子が張り出た方向と、生じたオキソニウムイオンをSn2形式で開環できるような配座を取りうるかにかかっているだろう。もしもっと大きな環状エーテルを利用できれば、その後の変換ではこれまで10員環以上の大員環を閉環してきた実績のあるNs基であるから、生成物の閉環には6員環のモルホリン以上の大きさも合成可能ではないかなあと感じた。

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