2010/07/29

Asymmetric Suzuki Cross-Couplings of Activated Secondary Alkyl Electrophiles

Pamela M. Lundin and Gregory C. Fu*
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP
DOI: 10.1021/ja105148g

本論文はここ1,2年でG.C.Fuが精力的に進めているrac-α-ハロカルボニル化合物を基質とした触媒的不斉カップリング反応に関する報告だ。これまでケトンを基質として根岸、檜山、熊田等のクロスカップリング反応や、金属種としてジルコニウム試薬を使用する反応など様々な例を報告している。今回はインドリルアミドをエステル等価基質とした、アリールホウ素との鈴木カップリング反応を行っている。生成物のインドリルアミドは酸化条件によって、インドールアミドへと変換可能で、生成物のさらなる変換が可能である。

著者らは今までの報告と同様にニッケルを触媒として検討を行っている。以前の報告でも配位子はBOX型とジアミン型と使い分けているように思われるが、今回はジアミン型の配位子を用いている。i-BuOHをプロトン源として用いていることが、収率、不斉収率向上に重要なようだが、作用に関する言及はない。アミド部位はWeinrebアミドや他のアルキルアミド、またエステルなどでも検討しているが収率、不斉収率ともに満足のいく結果を得ていない。



基質としては、αアルキル基はi-Buなどの大きめの置換基からTBS保護されたアルコールを有するものまで幅広く検討されており、収率はどれも良好だが、これら大きめの置換基では多少の不斉収率の低下が見られている。ホウ素上のアリール基も電子吸引基、供与基置換のもの共に非常に高い不斉収率で反応が進行している。また本反応はα位が臭素置換のものでも、塩素置換のものとほぼ同等の結果を得ている。インドリルアミドはかって福山先生が全合成の一コマに用いたこともあることからわかるように、温和な条件で脱離能の高いインドールアミドへと変換可能で、本報告ではこれを加水分解してカルボン酸へと導いている。

これまでの報告と同様にラセミの基質を用いても、単一のエナンチオマーが得られていることから、以前の系でも示唆されているように本反応でもニッケルがラジカルパスを経由して酸化的付加をおこなっていることが示唆される。本論文での新しい知見は、反応の終結前に残存する原料の光学純度を測定した所、低い効率ではあるものの速度論分割が起きていることがわかった点だ。いくつかの対照実験から、酸化的付加前の触媒の基質認識能にわずかながら差があることが示唆されている。臭素置換の基質では酸化的付加のしやすさからか、このような速度論分割が観測されていないこともこの仮説を支持しているだろう。

先日のHoveydaのJACSラッシュもそうだけれど、論文をよほど精査していないと一連の流れを掴みにくい時代になったものです。HighlightやMiniReviewのような記事の需要はますます増えていくんでしょう。

2 件のコメント:

  1. 「CHASING METHODOLOGIES THAT ARE NOT THERE」ブログ管理者様


    謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます.

    私は月刊『化学』の編集を担当しております化学同人編集部の山田宏二と申します.この度,小誌9月号(8月18日発売)において,特集記事「化学情報・WEBツールの活用術」を企画しております.その中で,科学者・研究者が開設しているブログを紹介するコーナーを制作しております.

    つきましては,こちらのブログ「CHASING METHODOLOGIES THAT ARE NOT THERE」のタイトルとURLを掲載させていただきたいのですが,お許しいただけますでしょうか.もし,ご事情により掲載をご辞退される場合は,私宛にE-mail( kyamada@kagakudojin.co.jp )にてご連絡いただけましたら幸いに存じます.

    突然のお願いにて,誠に恐縮ではございますが,ご検討の程よろしくお願い申し上げます. 敬具

    山田 宏二
    (株)化学同人 編集部(月刊『化学』)
    E-mail kyamada@kagakudojin.co.jp

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  2. >化学同人編集部 山田 さま
    ご連絡ありがとうございます。
    上記の件、了解致しました。

    私も貴誌の記事を毎月楽しみにさせて頂いている読者の一人です。
    これからも質の高い記事を期待しております。

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