2010/07/04

Hypervalent λ3-Bromane Strategy for Baeyer−Villiger Oxidation

asahito Ochiai*, Akira Yoshimura, Kazunori Miyamoto, Satoko Hayashi and Waro Nakanishi*
DOI: 10.1021/ja104330g

Baeyer-Villiger反応は、カルボニル化合物と過酸からアルキル基の転位を経て、エステル(ケトン)やカルボン酸(アルデヒド)を得る反応だ。このアルキル基の転位傾向は明確で、ケトンの場合は想定通りのエステルが得られる。一方でアルデヒドの場合は通常ヒドリドが転位することでカルボン酸を与えるが、o-ヒドロキシベンズアルデヒドではアリール基の転位を経てカテコールを与える(Dakin反応)など基質により反応性が異なり、合成化学的に有用性が低い。本報告では、超原子価臭素を用いた通常とは異なるコンセプトを提示し、アルデヒドを基質とした場合にアルキル基の転位を伴い、ギ酸エステルを優先的に得ることに成功している。

本報告では通常過酸のカルボニル基への付加から始まる反応を、水和から始まる反応機構を考え、その後超原子価臭素との配位子交換反応、生じたCriegee型の中間体からの転位によりBaeyer-Villiger型の反応が起こると考えた。超原子価臭素は対応するヨウ素化合物よりも高い脱離能を有することが知られており、所望の反応が進行することが期待できた。



実際に検討を開始した所、溶媒効果が大きく、ジクロロメタンを溶媒とした場合にアルキル基転位体が高い選択性で得られることを見いだした。mCPBAを用いた古典的条件では100%カルボン酸を与える基質でも、良好な選択性でギ酸エステルを与えた。アリール基の転位に関して、p-CF3のような求電子性の高い置換基を有する場合には2:1程度の選択性にとどまっている。

合成化学的観点から考えると、本反応はBaeyer-Villiger酸化の形式を取っているが、生成物はアルデヒドから減炭したアルコール保護体である。この類似反応として、例えば最初の水和の段階をアンモニアを使った場合には、アミナール構造を経てアミン(ホルムアミド)ができるのかどうかなどは気になる点で、これが可能ならカルボン酸からのCurtius転位の代替反応にもなりえるだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿