2010/09/07

Acetoacetanilides as Masked Isocyanates

Ying Wei, Jing Liu, Shaoxia Lin, Hongqian Ding, Fushun Liang*, and Baozhong Zhao
Org. Lett., DOI: 10.1021/ol101474f

ウレア構造は農薬や医薬品に頻繁に用いられる構造であり、ホスゲン(トリホスゲン)やイソシアネートとアミンを混合することで合成することが多い。本報告ではアセチルアセトアニリド構造から系中でアリールイソシアネートを生成させることでアミンとのウレア結合形成を行うというものだ。

本反応の発端は、著者らが研究していた、1,1-ジアシルシクロプロパンのアミンによる開環反応を検討していた所、予想していなかったウレア体が生成したことによる。そこで様々な基質を試した結果、1) β-ケトアニリド構造が必要、2) アニリド窒素上に水素原子が必要、ということが判明した。また反応条件を検討した所キシレン中で120℃に加熱することで高収率でウレア体が得られることがわかった。

基質一般性の検討を行った所、アニリド部位は電子供与基、吸引基ともに高収率でウレア体を与え、2-ピリジルのようなヘテロ芳香族でも問題なく進行している。一方でベンジルアミド誘導体では反応が進行していない。アミンとしてはピペリジン、モルホリンのような環状2級アミン、ジエチルアミンのような鎖状2級アミン、ベンジルアミンやアニリンのような1級アミンでも良好な収率で反応が進行している。唯一アンモニア(酢酸アンモニウム)を用いた場合には無反応に終わっている。また他の求核種としてアルコールやチオールを用いた場合にも反応は進行していない。


現段階では他の反応機構の可能性も考えられるが、β-ケト構造とアニリド上の水素が必要という事実から著者らは、アミンによるイミニウムイオンの形成、続いてエナミンが脱離しつつイソシアネートが生成するメカニズムを提唱している。脱離したエナミンは再びアセトンとアミンに戻り、生じたアミンがイソシアネートを捕捉することになる。

役に立つかどうかは疑問だが、混ぜて加熱するだけのお手軽反応であるし、おもしろい反応性を示していることは確かだろう。上述したように、もう少し反応機構を詰めるとさらなる展開が見えてくるかもしれない。個人的には脱水剤の併用、カルボニル炭素のラベル化、NMR実験などに興味があるところだ。

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