Eric M. Phillips, Matthias Riedrich and Karl A. Scheidt*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja1061196
α,β-不飽和カルボニル化合物へのオキシマイケル反応は、原料のオリゴマー化やレトロマイケル反応などが起こりやすいことから、難しい反応の一つだ。本報告ではブレンステッド塩基としてNHC触媒、添加剤としてLiClを用いることでこの反応を実現している。
反応条件の検討に当たり、市販のIMes-HClを触媒として塩基の検討から開始したところ、nBuLiを塩基としてカルベンを発生させた場合が最も収率がよいことが明らかとなった。添加剤として12-crown-4を加えたところ収率が低下したことから、Li源としてLiClを積極的に加えたところ収率が格段に向上した。そこで本条件を用いて基質一般性の検討を行うこととした。
アルコールの一般性としては脂肪族1級アルコール、2級アルコールともに良好な収率で1,4-付加体を与えることがわかった。Boc-セリン-tBuのような官能基を有するアルコールも収率よく目的物を与えるものの、ジアステレオ選択性はほぼ1:1にとどまっている。マイケルアクセプター側の一般性としては、アリールケトン以外にアルキルケトンやエステルに対しても適応可能だ。非常に自己重合を起こしやすいメチルビニルケトンに対しても中程度の収率ながら目的物を得ているのが特筆すべき点だろう。またβ位に芳香族が置換した基質では目的物が得られないとのことだ。アルキニルケトンとの反応ではE選択的に目的物を得ることに成功している。
NHC触媒自身も1,4-付加する可能性はあるものの、著者らはNHC触媒はブレンステッド塩基としてアルコキシド生成に関与している反応機構を提唱している。LiClはルイス酸としてエノンの活性化に働いている他、マイケル付加により生じたエノラートの安定化に寄与していると考えているようだ。また交差実験により、本反応条件においてはレトロマイケル反応は起こっていないことも確かめている。温度を70度まで上昇させると、レトロ反応が観測されることから、本反応条件の温和さが示されていると言える。
なおキラルNHC触媒を用いた本反応の不斉化については、分子内反応において11%eeを得るにとどまっており、有意な不斉収率ではあるものの、まだまだ改良が必要のようだ。
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