2010/09/27

Alkene Syn Dihydroxylation with Malonoyl Peroxides

James C. Griffith, Kevin M. Jones, Sylvain Picon, Michael J. Rawling, Benson M. Kariuki, Matthew Campbell, and Nicholas C. O. Tomkinson*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja1066674

オスミウムによるアルケンのジオール化は簡便な操作と高い基質一般性から有機合成において頻用される反応であるが、オスミウムに高い毒性があることなどから代替手法の開発が望まれているといえる。本報告ではマロン酸由来の環状過酸化物を用いて、温和な条件によりアルケンのシスジオール化を達成している。用いている過酸化物は容易に調製可能、ある程度の安定性もあるとのことで有用な試薬であるように感じられる。

金属フリーの酸化反応として、著者らは安定性が高いと考えられるマロン酸由来の過酸に注目して検討を行った。その結果、1.2当量の過酸化物と1当量の水を用い、40度に加熱する最適条件においてエステルの位置異性体混合物を高い収率で与え、加水分解を行うことで目的のジオールと試薬由来のジカルボン酸を得ることに成功した。後者は1工程、高収率で再び過酸化物へと変換することが可能のようだ。様々な基質を用いて反応を行っており、高収率で対応するジオールを得ているが、アルケンとしてはスチレン型のものが多い。また1,2-二置換アルケンを用いた場合にはcis-ジオールを選択的に与えている。


著者らは試薬リンカー部位をシクロプロピルからシクロペンチルまで種々合成しているが、反応性が最も高いものはシクロプロピル置換の試薬であった。X-rayによると5員環部は平面構造を取り、酸素-酸素結合距離はどの試薬もほぼ変わらないものの、二つのカルボニル炭素と、間の炭素との角度(CO-C-CO angle)がシクロプロピルでは大きくなり、試薬の歪みが増し、反応性が増加すると著者らは主張している(少し理解しにくいように感じる)。反応機構は取得した中間体、および酸素ラベルしたH2Oの使用により、オレフィンの酸素への攻撃と、続く分子内巻き込みによる5員環オキソニウム種の生成を想定している。

本反応は空気や湿気に安定で、調製も容易、後処理によって試薬由来の副生成物をを除去可能という操作上の簡便さも魅力的に思える。現在は触媒化に向けた研究を行っているとのこと。シクロプロピル環に不斉点を導入した程度では不斉化は難しいだろうが、不斉化への展開にも期待したい。

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