2010/09/11

Pyridine Activation via Copper(I)-Catalyzed Annulation toward Indolizines

Jos Barluenga*, Giacomo Lonzi, Lorena Riesgo, Luis A. Lpez, and Miguel Toms*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja106751t

多環式複素環化合物は医薬、農薬、材料など各種分野で用いられる骨格であり、なかでもイミダゾピリジンやインドリジンなど橋頭位に窒素原子を有する化合物は魅力的である。本報告ではジアゾ酢酸と銅触媒から生成した銅カルベノイド種とピリジン誘導体との[3+2]型環化反応によりインドリジン誘導体を合成する反応に関するものだ。

まず触媒量の臭化銅(I)存在下、ビニルジアゾ酢酸エチルとピリジンとの反応を行ってみた所、34%ながら目的とするインドリジンが得られた。ある種のインドリジン誘導体は不安定で、シリカゲルにより分解することが知られているため、生成物の安定化を考えてイソプロピレンジアゾ酢酸エステルとの反応を試みた所、メチル基置換体が90%の収率で得られた。また遷移金属カルベノイドとしては一般的なRh2(OAc)4の利用ではまったく反応が進行しないとのことだ。


各種基質を用いて反応を行ったところ、ジアゾ酢酸エチル側の置換基はβ位、γ位、置換基なしの順に収率が低下する傾向にあることがわかった。またピリジン上の置換基は電子吸引基はよいものの、メトキシ基やジメチルアミノ基のような電子供与基では複雑な反応混合物を与えてしまうとのこと。3位置換ピリジンの位置選択性は気になる点だが、3-ニトロピリジンや3-シアノピリジンなどでは置換基のパラ位から巻き込むのに対し、3-メチルピリジンでは置換基のオルト位から巻き込んでいる。ハロゲン置換でも低いながらも後者の選択性を示しており、電子的な要因や金属との配位能をはじめ複数の要素が影響していると思われる。

著者らは反応機構として以下のようなものを提唱している。すなわち、1) ジアゾ酢酸と銅触媒から銅カルベノイド種が生成、2) カルベノイドへのピリジン窒素からの1,4-付加、3) 生じた中間体からピリジン環への巻き込みが起こり銅(III)メタラサイクルの生成、4) 還元的脱離による銅(I)-π中間体の生成と酸化的芳香族化を経て目的物の生成と触媒の再生が起こる、というサイクルだ。さらに計算により1) ピリジン付加の段階が律速である、2)還元的脱離後に生じる中間体は速度論的/熱力学的に安定なものである、 という2つの結論を得ている。

副生成物にもよるが、著者らの主張ではピリジンによる付加が律速であることと、電子供与基置換の基質ではよい結果を得られていないことに違和感を感じる。また生成物の不安定性から仕方がない部分もあるが、収率が低い基質では結局置換基の性質によって反応性が低いのか、生成物が不安定なのかがわかりにくいのも気になる点だろう。

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