2010/09/13

Selective C-4 Alkylation of Pyridine by Nickel/Lewis Acid Catalysis

Yoshiaki Nakao*, Yuuya Yamada, Natsuko Kashihara, and Tamejiro Hiyama*†
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja106514b

ピリジンの遷移金属によるC-H結合の活性化は、窒素原子の配向性もあって通常2位選択的な官能基化が実現される。これは裏を返すと3位や4位選択的な反応は難しいことを意味する。本報告は嵩高いルイス酸とニッケル触媒の組み合わせにより、4位選択的なアルキル化を実現したというものだ。

著者らはすでに2位選択的なピリジンの官能基化には成功している。金属が窒素に配位しながら2位を官能基化するような系とは異なり、著者らの系はピリジン窒素の選択的活性化とはニッケル-アレーン様錯体を経て、ピリジン2位の官能基化を実現していることから、条件を調節することで3位や4位選択的な官能基化が可能なのではないかと考えたようだ。検討の結果、嵩高いアルミニウムルイス酸としてMAD、またニッケル上の配位子も嵩高いNHC型のものを用いることで、ピリジンとアルケンによる4位選択的アルキル化が進行することを見いだした。基質によってはニッケルの挿入段階に由来する直鎖/分岐鎖型の生成物の比が異なるものの、多くの基質で直鎖アルキル体選択的に生成物を得ている。この反応は様々なアルケンに適応可能で、ピリジン上の2位や3位に置換基を有していても望みの反応が進行している。キノリンのように共役系の範囲が伸びているものでも窒素原子のパラ位選択的にアルキル化が進行しているのは興味深い。


d5-ピリジンを用いた反応機構解析から、ニッケル-ピリジン錯体からのC-H官能基化はC4位が速度論的には有利であるものの、C2、C3でも起こりうることが明らかとなった。しかし、その後のアルキル基の挿入段階/還元的脱離段階が後者では立体的要因などから進行しないとことからC4位体のみが得られてくるようだ。また山本尚先生の研究ではMADは触媒的に用いるのには難しい印象を受けるが、著者らはMAD/ピリジン/生成物間における混合NMR実験により平衡を確認しており、MADの触媒サイクル機構が妥当であるとしている。

ピリジン環の2位以外の官能基化は、選択肢が少ないのが現状なので、このような反応の開発は素直に嬉しい。反応機構からの仮説により嵩高い触媒の利用を想起し、それを形としてまとめあげた本研究は美しいと言えるだろう。結論部にも記されているが、今後の動向として3位選択的な反応が実現すればさらに有用性が増すのは間違いない。

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