Brian W. Michel, Jessica R. McCombs, Andrea Winkler, Matthew S. Sigman Prof. Dr.
Angew. Chemie. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201004156
Wacker酸化はPd触媒を用いて末端アルケンからメチルケトンを合成する反応として取りあげられるが、アリル位にヘテロ原子を有する基質の場合、反応の位置選択性が低下し、アルデヒドとメチルケトンの混合物を与えることが知られている。Feringaらはフタルイミド保護されたアリルアミン誘導体ではアルデヒド選択的に、oNs保護された誘導体ではメチルケトン選択的に与える反応を報告している。本報告ではアリルアミンの保護基によらず触媒制御によりメチルケトンを選択的に与える反応に関するものだ。
著者らはすでにPd触媒とTBHPを用いて、保護されたアリルアルコールのWacker酸化においてメチルケトンを優先的に与える触媒を報告している。多少の条件改良の後に、前述のFeringaらの例ではアルデヒド選択的に与えたフタルイミド誘導体を用いた場合にも、著者らの触媒系ではケトンを優先的に与えることがわかった。他の基質にも適応した所、ホモアリルアミン誘導体や、Cbz、Boc、Tsなど他の保護基を用いたアリルアミン誘導体においても良好な収率、高いケトン選択性で生成物を与えることがわかった。キラルアリルアミン誘導体を用いた場合も、不斉収率の低下なしにケトンを得ている。当然ではあるが、得られたα-アミノケトンはキレーション制御、またはFelkin-Anh型の還元によりジアステレオ選択的な還元が可能だ。
Sharplessの反応が非常に信頼をおける理由の一つでもあるが、たとえ好ましくない型の基質であっても、触媒制御で反応を進行させられるようなパワフルな触媒を開発することは、触媒開発を行っている研究者の理想の一つだろう。また合成屋の観点からもこういった触媒制御による反応例が蓄積されていくことは好ましく、例えば合成スキームの一場面にあって、所望の反応を進めるために保護基の着脱などを行うなどということが避けられる可能性が増すことにつながるだろう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿