2010/08/07

Catalytic Asymmetric Claisen Rearrangement of Unactivated Allyl Vinyl Ethers

Maryll E. Geherty, Robert D. Dura and Scott G. Nelson*
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP
DOI: 10.1021/ja1039314

Claisen転位は立体的に嵩高い部位への炭素鎖導入も可能な有用な反応であり、様々な変法も含め研究の裾野は広い。本報告は不斉ルテニウム触媒を用いたClaisen型反応に関するもので、シグマトロピー転位の協奏的機構の見方を変えることで望みの反応を実現させることに成功している。

著者らはClaisen転位基質のO-アリルビニルエーテルをアリルエーテル誘導体とみなすことで、アリル位置換反応の利用を想起するに至った。すなわち適切な触媒によるアリル位での炭素ー酸素結合挿入反応と、結果として生じたエノラート種のアリル位への求核攻撃が実現すれば形式的にはClaisen転位体が生成すると考えた。この際に問題となりうるのはエノラートの求核部位としてアリル基の1位と3位が考えられ、この位置選択性の克服が課題となりえた。そこで分岐型アリル位置換体を優先的に与えると知られていたルテニウム(II)錯体を用いて検討を開始した。

種々検討を行った所、ビニルエーテルの脱離能の低さからルテニウム触媒単体では挿入反応が難しいことが判明した。エーテル酸素と相互作用しうる添加剤の検討を行い、ホウ素系ルイス酸の添加が良好な結果を与えることを見いだした。さらに本反応は生成物阻害が見られたため、ルテニウムへの配位子となるアセトニトリルも添加することで不斉収率に影響を与えることなく、収率の改善を実現した。恐らく配位子に関しても詳細な検討がなされていると思われるが、本文中での言及は少ない。実験によりアルコールによる水素結合が不斉誘起に重要であることが示されている。



望みの[3,3]転位体はベンジル位での結合生成となるため、3位芳香族置換基が位置選択性に影響を与えることは容易に想像できる。実際、電子供与基置換の方が3位選択性が高い傾向にある。またアルキル置換体では[1,3]転位体のみが得られるようだ。生成物置換基の相対配置は原料の二重結合の幾何異性に依存することもいくつかの実験により確かめられている。

素人目には分岐型アリル位置換反応を考えた場合には、まずイリジウム触媒を試すと思うのだけれど、色々検討した結果ルテニウムになったのだろうか気になるところ。

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