2010/08/17

Rhodium-Catalyzed Oxidative C−H Arylation of 2-Arylpyridine Derivatives

Qi Shuai, Luo Yang, Xiangyu Guo, Olivier Basl and Chao-Jun Li*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja105396b

クロスカップリング反応はその有用性からノーベル賞の声も高い有用な反応であるが、副生成物として基質調製に由来する当量の金属塩が生成してしまうことが、環境調和性が望まれる近年の化学においては一つの問題である。発展著しいC-H活性化反応を経る、いわゆるdirect arylationはクロスカップリングの基質のうち一方を事前調整不要な単純アレーンで代用する反応で、そのため副生成物の量が減ることとなる。これをさらに進めた酸化的カップリングでは両基質とも事前調整が不要な理想的な反応であるものの、量論量の酸化剤由来の副生成物に加え、反応の位置選択性に関して問題があった。本報告は、アリールアルデヒドを基質とする脱カルボニル型カップリングを行うことで、位置選択性の問題を克服しつつ量論量の金属塩も生成しないというものだ。カルボン酸の脱カルボキシル化を経るクロスカップリングは既に知られており、それをアルデヒドへと拡張しつつ酸化的カップリングに適応したものとも考えられる。

著者らは2-フェニルピリジンと4-アニスアルデヒドの反応をモデルとして条件検討を行い、(CO)2Rh(acac)を触媒、TBP(tert-butyl peroxide)を酸化剤としてクロロベンゼン中で加熱する条件が最適であることを見いだした。アルデヒドに加えて、ピリジンを配向基としているために、反応はすべての基質において望みの位置で進行している。論文中では極力触れられないように記述してあるが、本反応の問題は現在の条件では過剰反応としてピリジン窒素を起点として2つの芳香環が挿入してしまう生成物がかなりの量取れてきてしまっている点だ。多くの場合、約1:1の比であるため望みのビアリールの実際の収率は40-50%程にとどまっている。



酸化的カップリングの位置選択性の問題に着目した点はよいので、今後はさらなる条件検討により上述の過剰反応を防ぐことが求められる。またC-H活性化の化学ではピリジン窒素を用いる場合が多いけれど、生成物の汎用性を考えると、もう少し使いやすい官能基を配向基にした方が有用性は向上する。系が変わってしまうけれど、当量を抑えつつ嵩高いアミドなどを配向基として用いれば、2つ目の反応を抑えられるかもと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿