2010/08/25

Room-Temperature Alternative to the Arbuzov Reaction

Sean M. A. Kedrowski and Dennis A. Dougherty*
Org. Lett., DOI: 10.1021/ol1015493

ホスホン酸誘導体はHorner-Emmons試薬として用いられる他にも、興味深い生理活性を有することから薬理学的興味も大きい分子群だ。ホスホン酸誘導体の合成法としては、Arbuzov反応によりアルキルハライドから調製するのが一般的である。しかし、Arbuzov反応は通常高温条件を必要とすることから熱安定性に問題のある基質には適応できず、またアリール置換のものは求核置換反応を原理的に起こし得ないことから合成できない(これらは遷移金属を用いた反応で合成する)。本反応は、アシル-Arbuzov反応によりアシルホスホン酸を合成し、そのカルボニル基をWolff-Kishner還元により除去することでホスホン酸誘導体を得るという報告だ。

著者らは、1) アシル-Arbuzov反応は温和な条件で進行すること、2) α-ホスホノヒドラジンは安定に単離できたこと、という知見からWolff-Kishner還元の利用を考えるに至ったようだ。通常のWolff-Kishner還元は塩基性条件下高温が必要であることから、Arbuzov反応の欠点である高温という要素を克服できないように思える。しかし、隣接する電子吸引基のために中間体ヒドラゾンの反応性が上昇しているため、低温でも反応が進行するのではないかと著者らは考えた。各種条件を検討し、カルボン酸からの4段階を精製することなく進行させる実験手順を見いだすに至った。基質一般性としては、カルボン酸のα位に置換基が存在すると、立体的な嵩高さからヒドラゾン形成時に脱水ではなくジエチルホスファイトの脱離が進行しやすくなるため、収率が減少することがわかった。



4工程で70%の収率(各工程90%以上に相当)を出す基質も存在するものの、基質適応範囲が限定され、総じて収率も低めである。そのためコンセプトとしては目新しいものの、実用性の面ではまだまだ低いと言わざるを得ず、今後の改善に期待したい。話は変わるが、Caltechには条件検討用ロボットがあることが論文中に記載されており、大学にこういった設備があるのはさすがだなと思った。

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